「年齢とか、本当気にしないでいこ」若さを偏重する“日本人の年齢意識”に一石を投じたフリーアナウンサーの言葉

中将 タカノリ 中将 タカノリ

法律で禁止されているにもかかわらず止まない求人の年齢制限「アラサー」「アラフォー」といった年齢に関する嘲りめいた言葉の流行。世界広しといえど日本人ほどむやみに若さを有り難がり、加齢にネガティブな印象を持つ国民は少ないのではないだろうか。

今、SNS上ではそんな日本人の年齢意識に一石を投じる声が大きな注目を集めている。

「私が渡米する前、29歳女子アナ。『そろそろ出来る仕事も限られるねぇ』と言われていた。
渡米してNYで働き始めたら『えっ、Manamiはまだ30歳なの?これから何でもできるね!』と言われた。
国によってここまで価値観は変わる。
だから年齢とか、周囲の声とか、本当気にしないでいこって話です。」

とTwitterに投稿したのはフリーアナウンサーの佐々木真奈美さん。

佐々木さんは山形テレビを経てフリーアナウンサーに転身。2016年、29歳の時にジャーナリズムを学ぶためアメリカに渡っているが、そこで触れた年齢意識は日本のものとはまったく異なっていたようだ。

佐々木さんの投稿に対し、Twitterユーザー達からは

「日本って何でこんなに20代信仰強いんでしょうね。変な宗教みたいで怖いです。日系企業で年齢プレッシャーかけられましたが、31歳から外資に転職できて本当に良かったです。30歳なんてこれから何でもできます」

「転職も30代は難しい、30代は結婚率が下がるなど30代は日本はそんなに需要ないですか?と思います。むしろ経験値もあがって確かに体力は衰えるけどバリバリ働ける年代じゃないの?と思います。『何でもできるね』って人に言われるとすごく元気になれますね」

「わたしは2年前に病気で障害を抱える身になりましたが、障害を持つ者に対する壁とこのエピソードは、根が共通しているように感じました。なぜ端から決めつけるのか。その価値観はなぜ存在するのか。不思議に思うことはしばしばあります」

「大学院に行きたいと思っているのですが、今年30歳だしやっぱり遅いのかな…と卑屈になっていた部分がありましたが、少し元気が出てきました。ありがとうございます」

など数々のコメントが寄せられている。今回の投稿について佐々木さんにお話を聞いた。

中将タカノリ(以下「中将」):たいへん大きな反響を呼んでいる今回のご投稿ですが、なにかきっかけがあったのでしょうか?

佐々木:先日、転職を検討しているという知人のキャリア相談に乗った際、「もう私30代なんですけど大丈夫ですかね…?」という発言があり、「あぁ、自分の年齢を理由に挑戦を諦めてしまうなんて勿体ない!」と感じるような出来事がありました。

「もし今、この世に同じような悩みを持っている方がいたら、そっと背中を押してあげられるメッセージはなんだろう?」と考えた時に、自分自身も渡米前の30歳手前で年齢とキャリアについて悩んでいたことを思い出しました。渡米後にアメリカ人の同僚や友人からかけてもらった「Manamiはまだ30歳でしょ。人生これから何でもできる!年齢はあくまでただのナンバー(数字)」といった言葉に非常に救われた経験があったので、その時のエピソードを交えてツイートをしてみようと思ったことがきっかけです。

中将:渡米前、日本人の年齢意識についてどのように感じておられましたか?

佐々木:実は特に違和感を持っていなかったんです。「20代の転職」というような広告をよく目にしていたので、当たり前のように「挑戦できるのは若いうちだけ」というような感覚に陥っていましたし、一方で、「30代独身女性崖っぷち」というような言葉もよく目にしていましたので「そういうものなのかなぁ〜」と思い込んでいました。

中将:「そろそろ出来る仕事も限られるねぇ」と言われた時のシチュエーション、ご感想についてお聞かせください。

佐々木:テレビ局関係者ではなく、知人から何気なく言われたことだったと記憶しています。その時は、「今後自分の将来はどうなるのかな。大好きなアナウンサーの仕事だけれども、もうすぐ誰からも必要とされなくなるのかな…」と感じていたかなと思います。

中将:ニューヨークで触れた年齢意識についてご感想をお聞かせください。

佐々木:まず自分の年齢について考えることが格段に減りました。なぜかと言いますと、現地で就職活動する際にも、履歴書には年齢を記入する欄が無く、実際に面接で聞かれたことも一度もありませんでした。「年齢によってフィルターをかけられることは無いんだ!」という安心感がありました。早く日本でも、年齢や性別、顔写真の添付欄、既婚かどうかなどといった記載の無い履歴書が当たり前のように広まって欲しいです。

また渡米後すぐに、様々な国からやってきた色々な年代の友人と共に語学学校で英語を学んでいたので、そんな彼らから「何歳からでも挑戦はしていいんだ!」という勇気をもらっていました。

中将:ご投稿への反響を見ると、佐々木さんの言葉に共感し、励まされたという方が大勢いらっしゃるようですね。

佐々木:年齢が理由で、周囲から「今更挑戦しても無駄じゃない?」などといったような心無い言葉をかけられたことがあるという方がこんなに沢山いらっしゃるのだなとコメントをいただき分かりました。

また、他の職種や業界でも、特に女性は年齢や見た目などで仕事の幅が限られてしまっている現状も知ることができました。ニューヨーカーから教わった「年齢はただのナンバー」というメッセージを日本でも広めて、いくつでも何かに挑戦できるんだよということを伝えていく役目を担っていきたいと、今回私のツイートが多くの方の反響を頂戴したことで決意した次第です。

   ◇   ◇

「今後も、年齢やジェンダーの偏見などに囚われない生き方を応援したいと思っています。もし『佐々木と一緒に仕事がしてみたい!』という方がいらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせ下さい」と佐々木さん。今回の投稿を機にはじまった佐々木さんの新たな発信に期待したい。

2020年時点での日本人の年齢中央値は48.36歳(「World Population Prospects 2019」より)。世界でも最高水準の高齢国がここまで若さにこだわるのは失われつつあるものへの渇望か、はたまた自己肯定が下手くそな日本人ならではの帰結か。ともあれ、無用な束縛や差別を生み出しかねない日本の年齢意識の改革は今後我々が解決するべき課題の一つであることは確かだ。

   ◇   ◇

佐々木真奈美さん関連情報】

▽Twitterアカウント
https://twitter.com/manamisasaki

▽所属事務所「JOYSTAFF」
https://www.joystaff.jp/contact/

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