コロナ禍、米国で広がるセラピー犬のオンライン訪問 きっかけつくった「ドッグター」

谷口 輝世子 谷口 輝世子

病院や高齢者施設で患者やお年寄りを癒してきたセラピー犬が、新型コロナウイルス感染防止のため人とふれあえなくなっていた。しかし1匹のセラピー犬が“働き方改革”に成功、その動きが全米に広がり、再び人々は犬たちとの癒やしの時間を取り戻した。

メリーランド大学メディカルセンターでセラピー犬として働いてきたロキ(3歳、ロットワイラー)と飼い主で医学生のキャロライン・ベンゼルさん。ベンゼルさんは、これまでのように直接、患者と触れ合うことはできなくても「気持ちの優しいロキが人を癒す方法があるのでは」と考えた。

ベンゼルさんとロキとの関係は、ロキが生後10週の時から。ベンゼルさんは、これまでにもセラピー犬とともに働いたことがあり、すぐにロキが非常に優れたセラピー犬になれると確信した。その後、10カ月にわたりトレーニングしたという。

ビジネスマンたちにとってコロナ禍で必須となったオンライン会議にヒントを得て、ロキとともに画面を通じて患者たちをバーチャル訪問することにした。病院のなかにいる人たちに、外の空気や自然を感じてもらえるように、屋外から交信。ロキはセラピー犬として働くときには、いつも白衣を着て、ドクターをもじった「ドッグター」という名札をつけていた。画面越しの対面でも、いつものように白衣と名札をつけ、いつもと同じロキであることを感じてもらえる工夫もした。

その後、ベンゼルさんは病院で働く医療従事者が、ずっとマスクをしていることから、口や唇の荒れに悩まされていることを知った。そこで医療従事者にハンドクリーム、ローション、リップクリーム、リラックスしてもらうための紅茶やガムを袋詰めした「ヒーロー・ヒーリング・キット」を贈るために、Amazonのウォッシュリスト(欲しいものリスト)を通じて寄付を募った。

ロキが、この呼びかけをし、昨春スタートしたところ、あっという間に1400キットが集まった。ひとつひとつにロキのイラストと、感謝のメッセージをつけて医療従事者にプレゼントした。この「ヒーロー・ヒーリング・キット」は米国内外のメディアで取り上げられ、他の州でも行われるようになった。

セラピー犬として大活躍したロキはこのほど、ニューヨークの非営利動物病院「アニマル・メディアル・センター」から表彰された。いまではロキだけでなく、他のセラピー犬たちも、患者やお年寄りに対して、画面越しのバーチャル訪問を行うようになった。

ふれあってこそセラピー犬と言えるかもしれないが、“訪問”を受けた患者たちは画面を見ながらこれまでの動物と接した感覚を思い出し、動物と楽しく遊んでいる自分をイメージして楽しんでいるという。

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