大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票が1日に行われ、5年前の前回に続いて今回も僅差で否決された。「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は、是か非かの二者択一しか選択肢のない今回の住民投票を踏まえて、選挙制度のあり方について問題提起。「白票」という選択肢も有効とする制度が必要だと提言した。
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今回、大阪で「大阪都構想」についての住民投票が行われました。その結果、僅差で、都構想は否決されました。私は、この戦いを見ていて、日本の選挙制度の大きな問題に気づきました。それを今回書きます。
今回、この住民投票において問われたことは、都構想に対してそれを認めるか認めないかです。言い換えれば、「イエス」か「ノー」かです。私は、大阪の住民ではない部外者ですが、新聞やいろいろなメディアの情報を精査しても、実は、なぜ都となる必要があるの、あるいは、都となることが、将来の大阪市民のために、どれだけの福利をもたらすのか、まったく理解できませんでした。これは、多分多くの大阪市民も同じ思いだったと思います。
でも、そのような限られた知識や情報の中でも、「イエス」、「ノー」を投票しなくてはならない。これは、非常に厳しかったと思います。
なぜ、こんなこととなってしまったのでしょう。それは、簡単です。日本の、投票や選挙制度に問題があるからだと私は気づきました。
たとえば、今回の住民投票に、「なぜ、こんな住民投票を行うのかわからない」と考える人たちのために、「白票投票」が認められ、この「白票投票」が、一票として認められ、それが、「都構想」反対票として加えられれば、今回の結果は、多分、大阪市長も、大阪府知事も、いや維新の会そのものが、その責任をとって即時辞任、解散すべき結果となったでしょう。
ここまでは、大阪について書きましたが、国政についても同じです。
現在、衆議院、参議院とも、選挙区選挙は、小選挙区制となっています。つまり、一選挙区から一名を選出します。その選挙区に、自分の国政に対する思いを託すことのできる候補がいない場合は、「白票」を投じ、その「白票」も投票の中で一票として認め、その「白票」が、各候補の票を上回った場合は、その選挙に出馬したすべての候補は退き、再度新しい候補で、再選挙を行う。
私は、日本の投票や選挙制度は、このようなかたちに改革すべきだと考えます。国政選挙も地方選挙も、住民投票も、いずれも国民の大切な義務であり権利です。そして、投票しない人たちは、無関心な人たちと辱められます。でも、本当にそうでしょうか。投票に値する人や事項がないから行かない人たちも、実はたくさんいます。その人たちの権利を守り、否定する自由を確保するためにも、「白票」を大切な一票として認める制度が必要だと私は考えます。
投票に行かないことは、ある意味でこの国の国民としての、権利と義務の放棄です。でも「白票」を投じることは、きちんと政治に参加した、一人の人の意思表示です。それを認める選挙制度改革を求めます。