新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、10代への接種に対して「リスクがある」などと抗議の電話が殺到し、中には「殺すぞ」といった脅迫もあり、行政の窓口業務が停止するなど支障をきたしている。「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は10代へのワクチン接種阻止を訴える人と向き合う中、その根拠がネット上の不確かな情報であることを指摘し、その現状に警鐘を鳴らした。
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新型コロナウイルス感染拡大を抑えるために、政府は、ワクチンの接種を急いでいます。私の90歳の母も、先週2度目の接種を受けました。65歳の私も、7月8日に1度目の接種を受けることができます。
このワクチン接種に関して、私の元にも「接種を止めるように、特に10代の子どもたちへの接種は、絶対に阻止して欲しい」というたくさんのメールが届いています。その方たちと、できる限り連絡を取り、その根拠について聞いていますが、ほとんどすべて、ネットに書かれた不確かなワクチンに対する悪意に満ちた情報を根拠としています。
たしかに、人工的なものを体内に入れるのですから、何らかの副作用や人体への影響が、まったく存在しないということは、あり得ないでしょう。私は、2か月前から高血圧のために、降圧剤の使用を始めましたが、そのリスクや副作用について、きちんと医師から説明を受け、服用しない場合の危険性と比べ、自分で服用を決めました。
今回のワクチン接種は、決して政府が強制しているのではありません。それぞれの人たちが、政府や医療機関が示しているリスクをきちんと理解した上で、自らの意思で、接種を決定することができます。10代の子どもたちに対しても、本人と親とで接種するかしないかを決定することができます。
しかし、治療薬が未だできていない今、自分の命、それ以上に他の人たちの命を守り、最悪な状況に陥っている経済活動を復興させるためには、できる限り多くの人がワクチンを接種し、この感染拡大を阻止していくしかありません。これは、だれが考えても明らかな事実です。これに異論のある人は、よほどの知識のない人か、ワクチンそのものに対して悪意を持っている人、このウイルスの拡大が自らの利益となっている人だけでしょう。
日本では、言論の自由は、きちんと守られなくてはなりません。しかし、守られるべき言論は、嘘や悪意を含むものであってはなりません。ワクチン接種が自分にとって危険と考える人は、接種しなければいいだけのことです。いい加減な情報で、他の人にまで接種しないように強要することや、そのいい加減な情報を拡散し、多くの人たちにワクチン接種への不安を煽ることは、許されることではありません。
私は、先日、地方自治体のワクチン関係の担当者と話す機会がありました。毎日のように、ワクチン接種を中止するようにというたくさんのメール(組織的に送られているとのことでした)、また直接の電話、その対応が、仕事に大きな影響を与えていると嘆いていました。
ワクチンの接種は、それぞれの人が決めるべきことです。また、接種するにしてもしないにしても、それを非難されることも、責められることもあってはならないと私は考えます。