「仁和寺へ抜ける峠道の不法投棄の現状を取材してほしい」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINE(ライン)に、近隣住民から取材の要望が寄せられた。世界遺産に登録されている仁和寺(京都市右京区)の裏山で起きている不法投棄の現状を追った。
「この辺りは仁和寺の境内地ですが、不法投棄が多いです。車の部品や家電などが多いですね」。仁和寺の北にある原谷地区(北区)に向かう道沿い。案内してくれた僧侶がそう嘆いた。木々の間に、ソファや布団、ガスボンベなどが転がっているのが見える。
仁和寺の北西にある成就山一帯には、「お遍路」で有名な四国八十八カ所霊場を模した「御室八十八カ所霊場」がある。全行程を約2時間で巡れることから、京都にいながらにしてお遍路と同じ御利益にあずかれるとして人気を集めた巡礼路だ。山林の中に、1番から88番までのお堂が点在していることで知られる。
しかし、そんな人々の信仰を集めた霊場が近年、大型ごみの捨て場所になっている。僧侶は「巡礼路の東側の路上から下に向かって廃棄物を投げているようです。これでも回収して、ずいぶん減った方です」と言う。
65番のお堂付近まで来ると、廃棄物が積み上げられている一角があった。発泡スチロールの箱やさび付いた車の一部、こけむしたカーペットが確認できる。
成就山一帯での不法投棄は30年以上前からあるという。かつては、地元の双ケ丘中の生徒らも参加してごみ回収が行われた。しかし、仁和寺の金崎義真・管財課長は「きれいになっても、しばらくするとまた捨てられる。いたちごっこの状態」とこぼす。僧侶らも時折回収しているが、とても追いつかないという。
仁和寺は今、台風被害などでお堂や参道が損壊した御室八十八カ所霊場の整備計画を進めている。堂宇の修復や山林整備と合わせ、廃棄物の撤去も進める予定だが、その費用は約60億円と見積もられている。
金崎課長は、投棄する人に「まずは己を律してください。仁和寺の裏山まで捨てにくるなら、正規の廃棄手続きを取って処分してください」と呼び掛ける。
「読者に応える」のLINEで情報を寄せた会社員強田高之さん(52)によると、原谷地区に向かうもう1本の主要ルートも同様に不法投棄が多いという。
金閣寺近くの衣笠地区(北区)から原谷地区へと向かう道の途中、強田さんと歩道を歩いていると、強田さんが柵の奥を指さした。「この付近は、空き缶やペットボトルなどの投棄が多いです」。確かに、真新しい飲料容器が散乱しているのが見える。
さらに進むと、柵の奥は深い谷になっていた。薄暗く距離もあるため肉眼では見えにくいが、カメラの望遠レンズでのぞくと、人気キャラクターのぬいぐるみや、バケツなど無数のごみが散らばっているのが分かった。
強田さんは「谷の底がごみ箱になってしまっている。よく日本人は礼儀正しいとか、民度が高いとか言われるが、この状態を見ると本当かと思う。もっと現実を直視して、改めるべきところは、しっかり直してほしい」と語気を強めた。
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