新型コロナウィルス感染拡大の影響は中学受験業界にも広がっています。政府からの「緊急事態宣言」発令を受け、東京や大阪などの7都府県にある中学受験の学習塾は大手・中小塾ともに軒並み、教室での対面授業を全て中止。映像やオンライン授業に切り替えるという前代未聞の事態となりました。我が家も中学受験を目指して通塾する子どもがおり、4月中旬から映像授業がスタートしたところです。意外にも子どもは「よく分かる!」と満足そうな様子。しかし、対面授業に見合った「効果」を求める保護者からは、授業料の値下げや返金などがないことに不満の声もあがっています。
子どもが通う塾の映像授業は、YouTubeの限定公開。先生方の授業光景を見られるとあって興味津々の私は、子どもとともに“授業”に臨みました。映像は算数、国語、理科、社会の4教科。各教科担当の先生がホワイトボートに板書をしながら、授業のポイントであったり、例題や基本問題の解き方を解説したり・・・淡々と授業が進んでいきます。
映像授業といえば、「スタディサプリ」など大手サービスのテレビCMの印象が強く、講師が派手なパフォーマンスをしているようなイメージがあるかもしれません。今回はそこまでの過剰さはなく、シンプルで分かりやすい内容です。映像の中の先生は子どもがいつも通常授業で教えていただいている先生方ではありませんでしたが、質問は、オンラインなどで対応していただけるといいます。
子どもいわく、映像授業の良い点は「聞き取れなかったところを止めて見られるし、何回も見られる」とのこと。自分のペースで取り組めるというメリットがありそうです。ただ、「先生に当てられないからいい」などとふざけたことも言っていて…。対面授業での双方向のコミュニケーションが取れないため、先生の話を聞き漏らしてはいけないという緊張感や集中力が欠いてしまうことは否めません。
学校と同様、クラスのお友だちと一緒に授業を受けることの楽しさ、うれしさ、モチベーションの違いも感じます。今回のように母親と“授業”を受けたって、「ウザい」だけですから。
親の本音としては学校も含め早く対面授業が再開してほしいところ。でも、私たちが住む首都圏のコロナ感染が衰える気配はなく、しばらくの間は「Stay Home」で学習を継続していくことになりそうです。
ZOOMなど活用した双方向のオンライン授業が好評 …通常の対面授業により近く
各塾の対応というと、首都圏エリアでは大手塾のSAPIX小学部や日能研、四谷大塚などが動画配信や映像授業を提供。関西エリアでも、大手の浜学園をはじめ、希学園、能開セミナーなどが映像授業をスタートしています。
しかしネット上には、動画・映像だけの授業に対して「物足りない」「簡単な問題の解説しかしてくれない」「もうすこし工夫がほしい」といった保護者の指摘も。対面授業でなくなったにもかかわらず、授業料の値下げや返金などがないことも多いといい、不満をもらす人もいるようです。
「映像を視聴してもやる気が出ない。2月から入塾させなければ良かった。休校中でも、月謝は変わりません」
「せめて半額くらいは返金がほしい」
「不測の事態とはいえ一部返金などもないのは納得いかないですよね」
…一方、保護者の評価が高いのは、双方向のオンライン授業です。早稲田アカデミー、馬渕教室などで取り組まれており、Web会議ツール・ZOOMを使うケースが多いといいます。
オンライン授業を受けているお子さんがいる保護者の方にお話を伺ってみると、「通常の対面授業に近いものとして、いつもの先生やクラスの仲間との授業が可能です。だからこそ、子どものモチベーションを保ちながら勉強を続けられる期待感が膨らみます」とのこと。
もちろん子どもによっては向き不向きもあるかもしれませんが、ネット上にも「経験してみればなぜ対面にそこまでこだわっていたのかと感じるくらい良いです」といった声が見られます。
これら映像やオンライン授業は、塾だけではなく中学・高校などでも始めているとか。コロナ感染の早期終息を願いたいものですが、これをきっかけに日本の教育もIT化が加速しそうです。