新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が全国全ての小中高校と特別支援学校に3月2日から春休みまでの臨時休校を「要請」したのは、2月27日午後6時21分から同31分にかけて出席した感染症対策本部でだった。この日は木曜日だったため、要請に従うのであれば、翌28日が実質、3学期の最終日ということに。宿題は?荷物は?通知表は?修了式や卒業式は…?事前に各自治体の教育委員会などへの連絡は一切なかったといい、学校現場はにわかに大混乱に陥った。
Twitterでは直後から「#先生たち」というハッシュタグが生まれ、学校関係者とみられる多くのアカウントがそれぞれの状況を報告。「現場はパニックです。電話もバンバンかかってきます」「でも私たちには何もわかりません」「明日1日でどうしろと?」「何故か楽しくなってきてゲラゲラ笑ってる」など、阿鼻叫喚の様相を呈した。
そんな中、ある小学校教員の男性が、自身のブログ「パパ教員の戯れ言日記」で、自分たちが突然の要請にどう対応したかを詳細に記録したエントリ「職員室中がパニックに陥った18時30分すぎの話」を3月1日付で公開。「まるで災害に遭った記録」「災害というより人災」「きっとこういう地獄が全国の津々浦々で…」といった衝撃と共感を呼び起こしながら、爆発的に読まれた。
ある1校の、ある1人の先生が経験した個別のケースではあるのだが、おそらくあの日、多くの学校現場で似たような事態が発生していたはずだ。筆者である「すずすけ@Type_T」さん(@szsk_edu)の許可を得て、記事の内容を紹介したい。
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2月27日
理科のカリキュラムを全て終え、「残り18日」となった担任する5年生の日々に思いを馳せながら、放課後の職員会議、学年会を粛々とこなしていたすずすけさん。残業で書類仕事をしていた午後6時半すぎ、トイレで何気なく見たスマホで休校要請のニュースに気づき、びっくり仰天する。
「はいいいいいいい?」
何かもう、お腹の痛さとかどうでも良くなってしまい、速攻でトイレから出る。
トイレから職員室に戻る時に、校舎内の鍵締めの確認をしている教頭先生と会う。
「教頭先生!ニュース見ましたか?」
「え?何の?」
「あの、あの、首相が、安倍首相が。」
「…?」
「月曜日から全国の小中高を休校にするって、そう言ってるニュースが流れてます。」
「…もうエイプリルフールだったっけ?」
さあ、大変なことになった。
すずすけさんと、学校に残っていた先生たちは慌てて職員室のテレビをつけ、安倍首相の発言を確認するが、「え?」「は?」「えっ?」「何?」という短い言葉を発した後、全員が絶句。「来週授業ないってことですよね…」「学級を閉じる準備なんてまだ何にもしてないですよ」と戸惑いを抑え切れないまま、先生たちはそれでも何とか気を取り直して「準備」を開始することに。「とはいえ…何をしたものか」。校長はもう退勤済み。他学年は学年主任の先生がおらず、動くに動けない。
すずすけさんたち5年生の先生は、取り急ぎおよそ1カ月分、A4サイズにして48枚分の学習用プリントを用意。さらに、家庭学習に使えるオンライン教材用のIDとパスワードを全児童分印刷したり、翌日の簡単な打ち合わせをしたり…。「あとは今考えても仕方ないので、管理職の指示があってから考えることにしよう」と確認を取り、嵐のような数時間を終えて帰宅したという。
2月28日
朝出勤した時点ではまだ方針は決まっていなかった。「今日で終わりなんですか?」と児童に聞かれつつ、朝の活動と1、2時間目の授業はつつがなく終えたが、休み時間の臨時職員会議で「本日が最後になる」と正式に告げられたという。「マジかー」と嘆息するも、給食や掃除、最後の授業でクラス対抗のバスケ対決などに取り組み、「とにかく、お疲れ様」と受け持ちの児童たちを送り出した。
結局振り回されたりして大変は大変なんだけど、決まったことに文句言ってもどうしようもないので、自分の役割を全うします。一人一台が配備されていない私の市では、これが精一杯だったとは思いますが、一人一台配備の市ではオンラインで課題を出して、みんなでワイワイいいながらクリアして遊んでいるそう。
急に空いた1ヶ月。まぁ残業時間にやることが昼間にできるようになっただけなので、楽とか思っていません。受け入れのための児童対応がありますしね。
これでコロナが収まってくれれば、それに越したことはありません。
皆さんも、手洗いしましょ!
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反響にコメント
このエントリへの反響は非常に大きく、さまざまなコメントが寄せられた。すずすけさんは翌日付で、それらの声に応える形で新しい記事を公開。帰宅していた校長や、他の学年主任の先生を呼び戻さなかったことについて、「休校などの決済はもっと上の判断になる。なので、校長や学年主任を呼んでも仕方がないんですよ」と補足した。それでもすずすけさんが即座に動いた理由をこう綴った。
安倍総理の発言には、休校の開始を指定する日付が含まれていたんですよね。ということは、少なくとも勤務している市は政府の決断に刃向かったりした過去はないので、この開始日は遵守されるだろうという推測ができます。ということは残り時間が予想でき、学校に残るのが最善という結論にたどり着いた訳です。
この他、「一斉休校の可能性を微塵も考えてなかったのは不自然」とする指摘には、文部科学省からの「業務連絡」がどんな内容だったかを紹介。「まさかこの2日後にひっくり返るとは思わないと思うんですけど…ね」とした上で、
もちろん、何があってもいいように、子どもたちには「申し訳ないんだけれども、何があるか分からないから授業の速度上げるね。」って言って上げてたんですよ。だから2月中に理科も算数も終わってるんです。途中2週間の休みが入っても、学年末で調整可能なように動こうとしていました。…が、まさかの全部休みはもうお手上げです。
と突然の要請に翻弄された事情を明かした。
なお、働く保護者にとって頼みの綱である放課後児童クラブ(学童保育)に関しては、国が原則開所を要請。さらに、児童は1m以上の間隔を空けて活動するよう国が推奨したことで波紋が広がるなどしており、各現場で懸命の対応が続いている。
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■ブログ「パパ教員の戯れ言日記」■
・「職員室中がパニックに陥った18時30分すぎの話」
https://blog.edunote.jp/entry/2020/03/01/022302
・「今日から休校スタート!…いくつかのコメントにレスさせてください」