宮崎市内にある篠原動物病院は、ともに獣医師の篠原秀作院長(55)と理絵さん夫婦が営んでいる。同院で暮らす飼い猫・ゴーくん(オス、3歳)は、不思議なことに、来院する動物や飼い主と触れ合うのが大好き。「ドクターゴーくん」と呼ばれ親しまれている。ゴーくんの「マネジャー兼上司」という理絵さんにその“働きぶり”を聞いた。
理絵さん:ゴーくんは3年前、病院の敷地内で鳴いていたところを義父が保護しました。まだ生後2、3週間くらい。迷い込んだのか、捨てられたのか、どういう経緯でここにいたかはわかりません。義父の囲碁仲間の一人が引き取ってくれるというので、離乳食の時期までここで育てることにしたのですが、その話は結局、立ち消えになってしまい、ゴーくんはそのまま病院で暮らすことになりました。囲碁の「碁」にちなんで「ゴーくん」と名付けたんですけどね。
うちは動物病院ですから、犬猫をはじめ、うさぎ、ハムスター、フェレット、鳥などなど、毎日いろんな動物が飼い主さんと一緒にやってきます。幼いころからそうした環境で育ったからか、次第にゴーくんは、動物と飼い主さんが来院すると、駆け寄っていって「今日はどうしたの?」と言わんばかりに出迎えるようになりました。
愛するペットが体調不良や病気で、これからどうなるのかと不安を抱えている飼い主さんが多い中、ゴーくんは緊張を和らげるように飼い主さんに近づいたり、診察を待つ動物の匂いを丁寧に嗅いだりと、なんだか予備診察をしているようなんです。
犬に吠えられても、他の猫にシャーっと威嚇されても決して反撃することなく、無邪気に近づいていきます。犬猫だけでなく、フェレット、モルモット、うさぎなどの動物も、分け隔てなく寛容な態度で接します。鳥類もです。ゴーくんは適度な距離を保ち、手を出したりしませんが、飼い主さんが怖がる場合は、近づけないようにしています。
来院される方々は、そんなゴーくんをいつしか「ドクターゴーくん」と呼ぶようになりました。「この子(猫)は、ゴーくんだけには心を開くんです」「ゴーくんのおかげで落ち着いていられたよ。ありがとね」などと言って帰られる飼い主さんたちをみると、「でかしたぞ、ゴーくん」と心の中で思ってしまいます。