なぜか今「湯たんぽ」が人気だという。SNS上では主にキャンプ好きの人たちが「間違いなく冬キャンプの必需品!」「最高の暖房器具」「安いけど携帯カイロと湯たんぽの威力は実にすごい」などと大絶賛し、売れ行きも増加しているとか。特に注目されているのは、蓄熱式でもプラスチック製でもなく、昔ながらの金属製のもの。金属の湯たんぽといえば、人気アニメ「サザエさん」にも登場するような古き良き昭和の暖房器具といったイメージだが…なぜ令和の今、アウトドアで活躍しているのだろう?
90年以上前から製造販売を手がけるマルカ株式会社(尼崎市)にとっても、今の人気ぶりは予想外。同社国内販売課の課長・白石康之さんは「まさかアウトドアショップで湯たんぽを扱ってもらえるようになるとは…」と驚きつつ、新たな分野での需要の広がりを喜んでいる。通常は秋冬にしか売れない季節商品だが、最近、ネットショップでは5、6月にも売れるようになった。夏でも寒い場所のキャンプに向かう人が買い求めるのだろう。
同社の売れ筋商品は、トタン製の「湯たんぽA(エース)」。最大の長所は、薪やバーナーなどを使用した直火での加熱にも対応していることだ。従来通りに注ぎ口からお湯を入れても使えるが、この商品なら水を入れた湯たんぽをそのまま温めることができる。一度温めた後は電気や火を使わなくて済むので、テントの中でも安全に暖をとれる。何より、湯たんぽならではの自然なぬくもりで朝まで快適に過ごすことができるのが人気の秘訣だ。
このように直火対応の金属湯たんぽはキャンプに打ってつけ。それと同時に、最近は従来のように室内で使う人達にも再評価されるようになったという。きっかけの一つは「家庭で使うヤカンが昔より小さくなった」(白石さん)ということらしい。いったい、どういうことなのだろうか?
標準的な湯たんぽの容量は2~3リットルほど。小型のヤカンだと一度に注げる量が2リットルより少なく、満水にするには数回に分けて注がなければならない。しかし、直火対応の湯たんぽだと、ヤカンを使う必要がなく、さらに複数のコンロで家族の分まで同時に温めることが可能。また、翌日にそのまま再加熱できるので中の水を捨てなくてもよい。なんと、今の時代に求められている「時短」「便利」「節約」のすべてが叶えられているというわけだ。