ペットと安全に避難するために…大切な「ペットの社会化」 飼い主以外の人、他の動物に慣れさせて

大切なペットの命を守るために、地震や台風、豪雨などの災害にどう備えればよいのか。環境省は飼い主向けのガイドラインで、普段からのしつけや健康管理、避難用品の確保、避難先の情報収集などを呼びかけている。防災士の資格を持つ兵庫・淡路島の獣医師、杉村肇さん(60)は、まず取り組んでほしいこととして、ペットの「社会化」を挙げる。

兵庫県洲本市で動物の耳に特化した「どうぶつ耳科専門クリニック主(しゅ)の枝」を営む杉村さん。現在は、兵庫県獣医師会小動物臨床部会の災害・感染症対策委員長も務める。

1995年の阪神・淡路大震災で神戸市の実家が被災。98年に研修先のアメリカで動物介在療法(アニマルセラピー)の現場を視察し、災害時も含めて、ペットと人との良い関係について考えるようになった。阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などでのペットの保護・避難について調べるほか、2016年には防災士の資格を取得している。

杉村さんが重視するペットの「社会化」とは、「災害時に、避難所などで他の被災者と協調して避難生活が送れるように、飼い主以外の人や他のペットに慣れさせておく」ことだ。

「『生後3カ月までに100人に会わせなさい』と言う人もいる。普段から家族以外の人と出会っていたら緊張感を持ちませんし、いろいろな場所に連れて行くことによって環境の変化にも慣れます」(杉村さん) 全国各地の動物愛護センターなどで行われているペットのしつけ方教室に参加するのも有効だという。

杉村さん自身、2005年から飼い始めた愛犬、シュピの社会化に力を入れてきた。淡路島内で保護された生後数カ月のメスの子犬を迎えてから、とにかく多くの人に会わせるようにした。クリニックにも連れてきて、他の犬にも慣れるようにしたという。

子犬は命にかかわるような伝染病があるため、ワクチンを打ち終わるまでは、なるべく自宅で過ごし、散歩を控える飼い主も多い。このため、クリニックではドライブスルーでの受付を採用。伝染病の疑いがあるペットと、一般のペットとの出入り口を別に設けて、一般の待合室で、飼い主が子犬を床に降ろして遊ばせて社会化を進められるようにした。

また、総合診療から耳科専門に切り替えた2014年までは、月1回、兵庫県西宮市の動物愛護団体の協力を得て、子犬を飼い始めた人を対象に交流会を実施。多い時は約20組が参加し、待合室で子犬同士を遊ばせたり、しつけの基本を学んだりしたという。

「飼い主さんには、子犬なら抱っこしていろいろな人に会わせてください、と話します。それぐらい積極的に社会化を進めないと、ちょっとした刺激にも吠えてしまうワンちゃんになってしまいます」(杉村さん) 外部からの刺激に敏感な犬でも、根気強くいろいろな人に会わせたり、様々な場所に連れて行ったりすることで改善する場合もあるという。「運動だけでなく社会化のためにも、ワンちゃんの散歩は生涯続けてほしい」

また、飼い主が普段から、ペットとほどよい距離感で生活することも大切だという。杉村さんは「飼い主さんとワンちゃんとの距離が近すぎると、飼い主さんから離れると不安になって、吠えたり、引っかいたり、物にあたったりする可能性もあります」。飼い主以外といても落ち着いていられれば、避難生活が長期化した時に、親せきや知人に預かってもらうこともできる。その方が、飼い主とペット、双方が安心して過ごせる場合もあるのだ。

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