時速360キロの世界を体感 次世代新幹線「N700S」に乗ってみた 

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 時速360キロの世界を体感したことありますか。1年後のデビューを予定する新幹線の新型車両N700Sは、現行車両の最高速度285キロを大きく上回る360キロをたたき出す。その走行試験が5月から6月にかけ、米原(滋賀県米原市)―京都(京都市)で行われた。報道関係者への公開に合わせ、記者も超高速の世界を堪能した。

 深夜の米原駅に、そろりと16両編成のN700Sが入線してきた。先頭車両の前面「顔」部分を現在のN700Aと比べると、中央部の「鼻筋」が通ったような印象がある。車体には、金色で「N700S」のロゴが大書されている。

 車内に入ると、座席が横に5列並んでいる。一見すると現行車両と変わらないが、青い座席のシートに富士山のシルエットが所々に描かれているほか、各座席の肘掛け部分に携帯電話などが充電できるようコンセントが取り付けられているなど、相違点も多い。

 下りの新大阪行き最終新幹線が通過した後の午後11時41分、N700Sは米原駅をそろりそろりとホームを離れた。車両前方にあるデジタル速度計の数字が急ピッチで増えていく。

 4分後には早くも時速300キロに到達した。N700Sの試験車両がこれだけの加速を可能にしているのは、車両そのものの性能向上に加え、通常は16両のうち14両に搭載するモーターを全16両に積んでいるためだ。

 ほどなくして「速度360キロまで加速します」という車内アナウンスが流れた。そして駅を離れてわずか8分後、時速360キロに到達した。秒速でいえば100メートルに相当するスピードだ。窓外に目をやると、民家や街灯の明かりがものすごい速さで後方に流れていく。車内には「ゴー」という音と、この瞬間を収めようとカメラマンが切ったシャッター音が響く。

 時速360キロ区間は近江八幡市から野洲市付近の約4キロの45秒間。この日は最高で時速362キロを計測した。揺れが大きいため、カーブに差し掛かると窓際に置いていたカメラが座席に落ちた。

 

営業運転はいつ? 

午後11時59分、出発から18分後に京都駅に到着した。通常の営業運転に比べると2分ほど速い。東京―新大阪間であればかなりの短縮になるのではないか、と期待したいところだが、JR東海は当面、現在の営業最高速度285キロを引き上げる考えはないという。

 同社新幹線鉄道事業本部の上野雅之副本部長は、その理由を「一つの列車の速度を上げると、(追いつかれないようにするため)列車間隔を広げないといけない。1日400本弱を運行する東海道新幹線では一列車だけの速度向上効果は少ない」とする。

 じゃあ何のためのスピードアップなんだろうか。上野副本部長は「JR東海は海外でもビジネスをしており、台湾や米国テキサスに展開する上で新型車両のポテンシャル(可能性)を証明できた」と意義を説明する。

 N700Sは東京五輪開幕直前の来年7月上旬に走行を開始する。来夏の夏休みシーズンには新型車両で旅行ができそうだ。

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