生後間もない赤ちゃんが神社などにお参りする「お宮参り」(初参り)を控えた京都府木津川市の女性(31)から「授乳やおむつ替えの場所が整ったお参り先が見つからなくて困った」との声が京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」にLINEを通じて寄せられた。祈とう中に赤ちゃんが泣きだしたらどうしよう―。ママたちの心細さに神社はどう応えているのだろうか。
申し出あれば社務所提供
女性は夫妻の出身地が木津川市外だったこともあり、長女のお宮参り先を決める前にインターネットで検索した。「どの神社のホームページを見ても、おむつ交換台や授乳室の設備が見つからなかった。この時代に意外だった」と驚く。
夫の実家が京都市左京区内にあることから3月、下鴨神社に参拝。自宅を出る直前に授乳していたこともあり、参拝の間は落ち着いていた。「お参りが済むと夫の実家に駆け込み授乳した。荷物も多くなりがちなので、神社の中にちょっとした台などがあればありがたかった」と振り返る。
お宮参りの際、赤ちゃんが神職から祈とうを受ける本殿などにおむつ替えスペースがない神社は多い。下鴨神社ではトイレは楼門外にあり、おむつ交換台のみを備える。「楼門の中は神聖な空間なので」と広報担当者。ほかでも「本殿は神前であると同時に文化財でもあり、新たなスペースを作るのは難しい」(北野天満宮)「観光施設ではないので、どこまで整備するかが難しい」(八坂神社)との声が聞かれ、至れり尽くせりのサービスがある商業施設とは大きく異なる。
ただ、どの神社も参拝者からの申し出に応じて社務所の一室などすいている場所を提供しており、「赤ちゃんが泣きだした時は遠慮なく申し出てほしい」と呼び掛けている。
「時代の求め」完備の神社も
設備面で例外とも言えるのが上賀茂神社(北区)だった。本殿に続く控室の一角についたてで区切って長椅子を置いたスペースを設け、授乳やおむつ替えができるよう配慮している。駐車場の近くにあるトイレには授乳室とおむつ交換台を完備。広報担当者は「これからの時代に求められるだろうと思って整えた」と説明する。
4月上旬に長女珠々乃(すずの)ちゃんのお宮参りを上賀茂神社でした左京区の染色家福村健さん(39)、望さん(34)夫妻は控室のスペースを利用した。「当日は午前10時に授乳を済ませた後、11時からのお参りに備えたが、本殿で泣きだしてしまって」と望さん。持参していた液体ミルクも初めて使った。
おなかがいっぱいになって眠った珠々乃ちゃんの寝顔を見ながら、望さんは「設備も整っていて助かったが、一番ありがたかったのは神職の方の言葉」と話す。一緒に祈とうを受けた家族は4組。途中で泣きだした赤ちゃんも多かったが、「『神様は赤ちゃんの泣き声が大好き。退出しなくて大丈夫ですよ』という言葉に安心して座っていられた」。