今シカ見られない!赤ちゃん鹿が大集合 奈良で癒される前に知っておきたいこと

鹿谷 亜希子 鹿谷 亜希子

 国の天然記念物「奈良のシカ」の出産ラッシュが始まった奈良公園。ここには一度に数十頭の子鹿を思う存分眺められる至福の空間がある。春日大社参道から飛火野に向かって少し入った「鹿苑(ろくえん)」だ。毎年6月に1日3時間限定で開催される「子鹿公開」は、パラソルの下で目をつむってくつろぐ「子鹿だまり」や、お母さん鹿を追いかけてぴょんぴょん飛び回る悶絶級のかわいさにクラクラすること必至の子鹿パラダイスだ。

 筆者は偶然にも観覧席から出産シーンに遭遇。突然のお産に場内の鹿たちが一斉に近寄ってくるなか、羊膜に包まれてぬるぬると黒っぽい赤ちゃん鹿の全身を、母鹿が懸命に舐め続けること7~8分、みるみると鹿らしくなった赤ちゃん鹿が、自力で立ち上がるのを目の当たりにするという感動的な瞬間に立ち会うことができた。

 出産時期を迎えた鹿は母性本能が強く、近づいてくる人間を攻撃することがある。メス鹿の出産年齢は3歳から推定18歳くらいまで。人間が不用意に赤ちゃん鹿を触ると、母鹿が育児を放棄するという悲劇も発生する。このため4月から7月中旬まで、奈良公園周辺にいるお腹の大きな母鹿や、人通りの多いところで出産した母子鹿は、鹿苑で一時保護される。「子鹿公開」は、この保護期間を利用して、鹿たちの生態や母子鹿との正しい接し方を広めることを目的とした特別公開だ。

 「奈良の鹿愛護会」は、これら一連の保護活動を続け、人と鹿の共生をサポートしている。同会は今から85年前の1934年に設立された保護団体(現在は一般財団法人)。13名の職員のうち、現場を担当する事業課の職員は7名。交替で鹿の生息地の巡回パトロールや、交通事故などで負傷した鹿たちの保護、獣医師とともに治療して完治するまでリハビリをさせたり、身体障害となった鹿を飼養するほか、住宅地にまで行ってしまった迷子鹿を捕獲しにいったりと、仕事は1年365日24時間多岐にわたる。最近では「鹿にカバンを取られた」「角にカメラが引っかかって取れない」といった観光客からの連絡で出動することも多い。

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