学校が減り続ける自治体が、校歌の復元・保存に取り組むワケ…卒業生探し、歌声から楽譜起こしも

南 文枝 南 文枝

 朝礼や学校行事など、事あるごとに歌われる校歌。歌詞には地域の風景や歴史が刻まれるが、いま、全国的に学校の統廃合が進み、多くの校歌が忘れ去られようとしている。校歌を保存、復元することで、地域の文化を継承していけないか。そんな思いから兵庫県宍粟市が始めたのが、懐かしい校歌の歌詞や音源を、市のホームページで公開するサービスだ。

 文部科学省の統計によると、1955年から2017年にかけて、私立を含む全国の幼稚園は約2倍の1万878園に増えた。その一方で、小中学校は少子化などによる統廃合が進み、小学校は2万95校(約6800校減)、中学校では1万325校(約3400校減)まで減った。ひとたび学校が閉校してしまえば、公の場で歌われる機会は激減してしまう。

 宍粟市は2019年4月から、「心のふるさと校歌保存事業」として、市のホームページで、1955年以降の市内57の幼稚園、小学校、中学校の園・校の歌詞や楽譜、ピアノ楽譜、伴奏付きの歌声を公開している。閉校した幼稚園6園、小中学校26校の園・校歌も含まれるのが特徴だ。歌声は、パソコンやスマートフォンで聴くことができる。

 事業のきっかけは2017年9月、市教育委員会の会合に出席していた1人の教育委員の提案だった。「どんどん学校がなくなっていっているので、校歌を残したらどうだろうか」

 同市では、学校が統廃合する場合、元の学校を閉校し、新しく開校するため、校歌も一新される。いまある校歌を保存、閉園、閉校した幼稚園や学校の校歌も復元することで、「地域の文化でもある校歌を継承し、学校や地域にゆかりがある人々に懐かしんでもらいたい」(市の担当者)と、市の18年度予算に、音源作成などにかかる事業費240万円を計上した。

 18年8月の終わりから、市の担当者らが歌詞や楽譜などの資料集めに奔走。現存する園・学校から、統合前の学校のものを含めて保存されていた資料を入手したり、閉園、閉校した園・学校の記念誌などで歌詞や楽譜を調べたりしていった。

 苦労したのが、1966年に閉校した旧一宮町の町立染河内(そめごうち)中学校の資料だ。歌詞は創立25周年記念誌に書かれていたが、楽譜がどうしても見つからなかった。そこで、人づてに校歌を覚えている卒業生を探し、歌声を録音して楽譜に起こした。すべての園・学校の資料を集めるのに、3カ月ほどかかったという。

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