学校が減り続ける自治体が、校歌の復元・保存に取り組むワケ…卒業生探し、歌声から楽譜起こしも

 これらの資料を元に、委託を受けた市内の楽器店が音源などを制作。実際に歌われている状態に近づけようと、現存する園・学校は、学校行事などで児童が歌った録音と、楽器店が制作した楽譜を付き合わせた。手書きの楽譜は、ピアノで弾いて確認した。完成した音源は、卒業生の市職員らに聞いてもらい、おかしなところがないかをチェックした。

 そうして完成させた園・校歌を市のホームページで公開したところ、市に「いいことをされましたね」などの声が寄せられるようになった。メディアなどで情報を知り、「どうやって聴いたらいいんやろ」と市役所を訪れた卒業生もいたという。

 事業に携わった市教育委員会教育総務課課長、進藤美穂さんは言う。「私が通った旧神河中学校は1988年に閉校しましたが、歌詞を見たら校歌を思い出します。お正月など同窓生が集まった時や、ふるさとを離れている時でも、スマートフォンで校歌を聴いて懐かしんでもらえたらいい。校歌が忘れ去られてしまう前に、平成のうちに完成させられて良かった」

 京都文教短期大学(京都府宇治市)の研究紀要第54集(2016年発行)には、同大学の元非常勤講師、宮島幸子さんの論文「歌い継がれなくなった校歌-閉校式フィールド・ワークを通して-」という論文が掲載されている。広島県尾道市の因島で行われた小学校3校の閉校式に参加した宮島さんが、校歌の文化的役割を考察した論文だ。

 閉校式に出席した卒業生の聞き取りなどを行った宮島さんは、論文の中で、校歌の存在意義について「校歌は、閉校する学校のなかでより強くノスタルジーを漂わせ、かつて在校生だった頃を懐かしむ感情を支え、人生の岐路に立った時、過去に通っていた学校周辺の風景や学校での出来事、自分の周りの人々(両親、兄弟、祖父母、親せき、先生、友だち)の存在や関わりなどが、メロディーにのって脳裏に浮かんだら、人生に指針を与えてくれる・・・そんな役割を持っている」とまとめている。

 学校の校歌以外でも、かつて地域の伝統的な祭りで歌われていた歌の歌詞は見つかったが、節回しが分からないために歌えなくなってしまったという話も聞く。地域の文化を残すためにも、宍粟市のような取り組みがどんどん広がっていってほしい。

◆宍粟市心のふるさと校歌保存事業(校歌・園歌)のページ

https://www.city.shiso.lg.jp/kosodadekyoiku/yotien_hoikusyo/6752.html

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