なぜ渋谷スクランブル交差点に外国人は集まるのか?仏人学生が指摘する「クレイジー」

北村 泰介 北村 泰介
スクランブル交差点の魅力を現場で語るフランス人学生のルカスさん
スクランブル交差点の魅力を現場で語るフランス人学生のルカスさん

 外国人観光客にとって、いまや東京を代表する観光スポットとなった渋谷駅前のスクランブル交差点。同駅のハチ公口と繁華街を結ぶ移動の“手段”であったはずの歩道が、いまや“目的地”と化している。多国籍エリアとなった場所で自撮り棒を手に撮影された画像や動画が世界中に配信されている。なぜスクランブル交差点に外国人は吸い寄せられるのか。サッカーW杯で交差点が盛り上がるタイミングで検証した。

 日本がセネガルと引き分けた25日未明、試合終了から30分ほどが経過した午前2時半頃。熱狂の渦の中、日の丸のはちまきを締め、日本代表のレプリカ・ユニホームを身につけた白人青年がいた。

 「ルカス」と名乗る22歳のフランス人大学生。同国から観光で来日中で、流ちょうな英語を話す。この日は、3日前に浅草で仲良くなった日本人と渋谷にやって来た。「スクランブル・コウサテンって、最高にクレイジーな場所だね。人生の中で最もクレイジーな夜の1つになったよ」。興奮冷めやらぬ表情で思いをはき出した。

 「クレイジー」の真意を問うと、ルカスさんは「悪い意味じゃない。ワクワクさせる、何でもありでイケている、そんな感じかな。日本代表の試合もすごかったけど、交差点がとてもエキサイティングだった。ずっと来たい場所だったから、すごくいい経験ができたよ」と魅力を語った。

 スクランブル交差点の特徴はやはり斜め横断にある。全方向に広がる進路に“自由さ”があり、それゆえに信号が青に変わった瞬間の解放感がある。世界有数の大都市・東京において数少ない“解放区”として見られている要因の1つだろう。

 だが、日本代表戦後は警視庁によって斜め横断は規制された。従来の自由さがなく、対面への直線移動のみという窮屈さを伴ったが、明け方まで盛り上がりは続き、ルカスさんだけでなく、サムライ・ブルーのユニホームに身を包んだ外国人の姿も目立っていた。

 関西人の若者がそんな彼らの思いを代弁した。今春、大学新卒で、京都から上京した24歳の会社員男性だ。

 「関西だと大阪の道頓堀になりますが、渋谷のスクランブル交差点がずっと気になっていました。東京に引っ越して今回初めてW杯観戦とセットで来て感じたのは、この場所には『日本人がふだん見せないものがある』ということ。それが日本代表と重なって強く感じられました。ふだん見せずに抑えていた思いが解放される磁場のようなものというか」

 盛り上がるルカスさんに「日本とフランス、どちらを応援?」と聞いてみた。今大会で対戦があるならば決勝トーナメントの準決勝か決勝となる。「どちらも応援する。日本代表には愛を感じているからね。日本人選手は驚くべき能力を持っているよ」と即答した。

 現実性は別にして、そんなドリームマッチが実現したら、スクランブル・コウサテンの名はさらに全世界へと拡散していくだろう。

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