「有馬人形筆」復活から一年超え 持ち主に幸せを運び続ける

山本 明 山本 明

 「やっと落ち着いてきた」とふたりはいいますが、同時に「先々代、先代の苦労と偉大さを改めて感じる」ことも多いといいます。人形筆は第二次世界大戦などで一時、殆ど生産が行われなくなっていたのを先々代である5代目が、先達のない状態から復活させたのだそう。「先々代は残っていた人形筆をばらばらにして、仕掛けなどを調べて……糸も解きながら巻き方を勉強して」。その姿が、火事で店が全焼し、ゼロからのスタートとなった自分たちの姿に重なるのかもしれません。しかしご夫婦は受け継がれてきた伝統を大事に守りつつも、最近の巻き手さん達が提案してくる新しい巻き方である「ステンドグラス」、「花束」などの柄も積極的に受け入れます。色目も従来のものより明るく彩度の高いパステルカラー調にするなど時代に沿った製品を店に並べ、これが好評なのだそう。「iPadを使ってメールのやり取りもしますよ。そうしないと商売がやっていけませんから」と健一郎さんは笑います。

 最後に少子化、晩婚化が懸念される現代において、もともと、結婚のお祝いや子宝を授かるお守りとして知られた「有馬人形筆」がどのような人に求められるのか聞いてみました。今は美しい工芸品として買いに来る人が多いのでは、前述のような目的で買い求めに来る人は途絶えてはいませんか?と。「いえ、今でもたくさんの人が来てくださいます。この筆を買った後でお子さんができました、というご報告や、ご結婚が決まった女友達にお祝いで買いますというお嬢さんもいましたし、ご自分が親に買ってもらったから、娘にも買ってやりたい、と世代をこえてお求めくださる方も」と明子さん。愛らしい人形筆が良いニュースと幸せを持ち主と店に運んできてくれるのかもしれません。

◆「有馬人形筆」(1本、紙箱入り、ステンドグラス柄等)3000円(税込み)

◆「灰吹屋西田筆店」連絡先などの詳細はこちら/http://www.arimahude.com/index.html

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