「オートバイの事故が多発しています。けがをしますと病院に収容されるまで約2時間かかります」。とある道路に設置されている「安全運転のお願い」看板が、衝撃的な内容だと話題を集めています。そんな長い時間かかるなんて、もしや到着するころには最悪の結末も…と、いろいろ想像をかきかてられる文面に、SNSでは「血がだらだら出てる状態で2時間は恐ろしい」「十分に気をつけます」など、安全運転の決意をあらたにするコメントが寄せられています。そんな看板が立つような道路、とんでもない田舎に違いない!と思って調べたら、なんと東京都内に存在する有名観光道路のようでした。ああ、東京都って想像以上に広いのですね…。
看板が設置されているのは、東京都奥多摩町から檜原村を結ぶ「奥多摩周遊道路」です。1973年に有料道路として開通し、90年から無料化されています。奥多摩湖が織りなす雄大な自然美が楽しめるだけでなく、カーブが豊富な山岳道路ということもあり、ドライブやツーリングのコースとしても人気のスポットといいます。最近は、地元自治体の自転車レースに使用されていることもあり、自転車で走る人も多いそう。でも、なんでそんなところに、こんな怖そうな看板が…。
「初めて看板を見たときは、やっぱり事故が多い道路なんだなと感じました」と教えてくれたのは、気軽なツーリング先としてときどき走るという梅酒みりん(@PokersonT)さん。実はこの看板、奥多摩周遊道路をよく利用する人たちにとっては「名物的存在」といいます。「この道路は「奥多摩有料道路」と言われてた1980年代から事故が多く、一時期は毎月人が死んでいたと言われるほどでした」。…ここまでストレートな物言いをする看板の背景には、切実な事故抑止への願いが込められているようです。
奥多摩周遊道路を管理している東京都建設局西多摩建設事務所奥多摩出張所の道路管理担当の方によると、看板が設置されたのは1984年のこと。有料道路だったころのゲート跡や、道路に設けられている駐車場に複数設置してあるそう。看板に書かれていることについて聞いてみると…。
「いえいえ、本当です。事故が起きた際の搬送先は青梅市内の総合病院になるのですが、救急車で片道1時間程度かかります」
ああーっ、それは大変ですね。…?でも、ほらほら、1時間じゃないですか。2時間はちょっと大げさ?
「違いますよ。それは片道の時間ですよ。救急車が事故現場まで行く時間もかかるんですから。現場まで行って、病院のある街まで戻って、往復で2時間。本当にかかるんです」
…でも、大きな事故だったらヘリで運んでもらうことだってありますよね。びゅーんとひとっ飛びで…。
「ヘリで搬送になったケースでも、最初は救急車が現場に行っています。それで片道1時間。状況を見てヘリの出動を要請し、飛んできて、搬送して…すべて時間を足すとやはり2時間くらいはかかるのでは…」
うわー。希望が絶たれた感じです…。