「プラセボ効果」から得る教訓…人の体、実はわからないことだらけなんです

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
 問診表と電子カルテのデータ…医学は進歩を続けていますが、未解明の領域は多いようです
 問診表と電子カルテのデータ…医学は進歩を続けていますが、未解明の領域は多いようです

 以前に触れたプラセボ効果(偽薬効果・暗示効果)に関する面白い話があります。2002年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」誌に記載されている記事です。それまでのプラセボ効果は、内服や注射、点滴、食物の摂取などが主な対象だったのですが、なんと外科手術に対し、なされていたというのです。

 膝が悪い人に「本当の手術をしたグループ」と「皮膚を切開したのみのグループ」に分け、その効果を調べたのです。結果は、驚くべきものでした。2つのグループで、治療効果の差は認められなかったのです。それどころか、皮膚だけを切ったある患者さんは手術をされたと信じ込み、それまでは杖(つえ)をついて歩いていたのに、バスケットボールができるまで回復されたとか。にわかに信じがたい話ですが、本当に起こったことなのです。

 さらに面白い記事があります。2000年の「サイエンス」誌に記載されています。ウイルスや細菌が、ある疾病の原因となることがあるというのが「細菌説」です。それを確立したのは、有名なパスツールとロベルト・コッホです。しかし、それば間違いだと主張したペッテンコーファー(医師であった森鴎外のドイツ留学時代の恩師)は弟子とともにコレラ菌の入った水を飲みほしましたが、下痢のみで脱水症状を起こさなかったというのです。すなわち、コレラに罹患しなかったのです。

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