「いだてん」で大注目の天狗倶楽部 その実態を描く「快絶壮遊 天狗倶楽部」新版発行

山本 明 山本 明
ペンとバット?!実は野球チームとは別の文士チームとしての顔もあった「天狗倶楽部」
ペンとバット?!実は野球チームとは別の文士チームとしての顔もあった「天狗倶楽部」

 (続けて)

 「活動種目もやがて、野球、相撲、テニス、柔道、陸上、ボートと多岐に亘り、スポーツを中心としつつも奇天烈な騒動を引き起こす面白そうな集団として注目されていたようですね。同じく高学歴であっても、スマートで上品な文化に対抗した、粗野で野蛮を旨とする飾らないストレートな価値観は、ハイカラに対するバンカラ文化の象徴のひとつとして、日本文化の一翼を担ったのではないかと思います」

 -少年時代は退学を繰り返すなどたいへんな親泣かせもした押川春浪さん。が、後年は大人気雑誌「冒険世界」の主筆(編集部の総責任者)を務めたり苦境にある青年作家に助けの手を差し伸べたり、と有能で情に厚い面を本書の中で見せてくれますね。

 「押川春浪の行動原理を表す最も分かりやすい言葉は『正義か否か』であったといいます。損得勘定を気にせず困っている者を助け、世の中にとって正しいこと、公正であるかといった大局的な視点で物事を見られた方であり、それゆえ多くの友人を作りユニークな倶楽部を発展させることができた傑物であったと考えています」

 -実は、押川春浪さんは日本の古典SFの始祖であると本書にはあります。代表作「海底軍艦」はどんな内容でしょうか。

 「世界漫遊旅行の途中で旅客船が海賊に襲われて沈没し、主人公の男は絶海の孤島にたどりつきますが、そこでは大日本帝国海軍の櫻木大佐が来るべき戦いのために密かに新型潜水艦『電光艇』を建造していたのだった…というのが押川春浪の『海島冒険奇譚 海底軍艦』のはじまりです。シリーズは人気を博し、1900年から足掛け7年で外伝まで含め第8部まで刊行されたそうです」

 -本書に押川春浪さんと仲間たちの、たいへん愉快なエピソードが次から次へと描かれます。その中でも特にお薦めのエピソードを教えてください。

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