「いだてん」で大注目の天狗倶楽部 その実態を描く「快絶壮遊 天狗倶楽部」新版発行

山本 明 山本 明
ペンとバット?!実は野球チームとは別の文士チームとしての顔もあった「天狗倶楽部」
ペンとバット?!実は野球チームとは別の文士チームとしての顔もあった「天狗倶楽部」

 「『いだてん』では満島真之介が演じた、天狗倶楽部の倶楽部員にして早稲田大学応援隊初代隊長、吉岡信敬のエピソードがとても印象的です。これは本書の第5章冒頭に記されていることですが、明治39年に『早慶戦中止事件』というものがありました。野球の早慶戦の応援があまりに加熱し、慶応側が大隈重信邸前で悪口雑言を吐き、早稲田側が福沢諭吉邸前で騒ぎまくり、双方の応援隊の席配分で揉めに揉めてこれ以後早慶戦野球が19年間も中止になってしまうという事件でした。吉岡信敬は馬車でグラウンドに乗り込むとか馬上応援をしたといった話が残っていて、これらはほとんどが後に作られた伝説なのですが、『虎髯将軍』とあだ名されバンカラ中のバンカラと呼ばれた吉岡らしいエピソードですね」

 -本書の著者であり、SF作家でもあった横田順彌さんの作品には天狗倶楽部が登場するお話もあるそうですね。

 「ご自身がSF・冒険小説作家である横田順彌さんが、押川春浪と天狗倶楽部の面々を主人公に書いた『火星人の逆襲』は、H・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』でロンドンに火星人が襲来する話が本当にあった出来事だとして、その13年後、押川春浪らが実際に活躍していた時代に火星人が2度目の地球攻撃をしてきたら…という物語です。『人外魔境(ロストワールド)の秘密』のほうは、コナン・ドイルの小説『失われた世界』の中で描かれた、チャレンジャー教授たちが南米で恐竜を発見したギニア高地に押川春浪らが探検に行き、彼ら同様恐竜に出会うのですが、そこにドイツの間諜が絡んできて…という冒険小説です。いずれもたいへん面白く、ほとんどの登場人物は実在の人物で、明治時代のその日の天気までもが忠実に再現されている「明治時代の現代小説」ともいうべき徹底した時代考証の基に描かれています」

 -本書は現在放送中の大河ドラマに登場する人気の集団を描いた作品です。ぜひ本書の読みどころを教えてください。

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