フジの月9ドラマ「366日」に出演している他、来年の正月映画「君の忘れ方」では主演を務める坂東龍汰(ばんどう・りょうた)。そもそも「坂東」とは何だろうか。
文字通り「坂の東」に住んでいたということから生まれたものもあるだろうが、「坂東」には別の意味があった。小学館『日本国語大辞典』をみると「関東地方の古称。足柄峠および碓氷峠の坂から東方の地域の意から出た」とある。
古くは「坂東」は東北地方も含んでいたが、やがて相模・武蔵・安房・下総・上総・常陸・下野・上野の8か国(関八州ともいう)を指すようになった。今の関東地方である。利根川のことを「坂東太郎」ともいうように、「坂東」というのは広く関東地方という意味で使われた。
こうした広い地名に由来する名字は、その土地に住んでいた人が名乗ることは少ない。というのも、名字とは家を特定するために生まれたもののため、「坂東」といっただけではどこに住んでいるかわからないからだ。
では、どういう人が名乗ったかというと、別の地域に移り住んだ人が、出身地という意味で名乗ることが多かった。坂東から遠く離れた場所では「坂東から来た人の家」といえば、どの家かを特定することができたからだ。
現在の「坂東」の分布を調べてみると、関東地方には少なく、四国・関西・北海道に集中している。なかでも多いのが徳島県で、阿波市のように市で一番多い名字が「坂東」というところもある。
実は、徳島県の「坂東」には別の由来がある。徳島県北東部に板野郡という地名がある。吉野川流域の肥沃な土地で、県内でも比較的人口密度の高い地域だ。この板野郡の東部を「板東」といい、そこに住んでいた人が名乗ったのが「板東」という名字で、この付近に激しく集中している。
しかし「板東」という名字はこの地域以外では珍しく、「坂東」と間違われることも多い。現在でも元プロ野球中日で俳優の板東英二は、ネット上などでしばしば「坂東英二」と書かれたりする。
また、かつては本家と分家で名字の漢字を変えるということは珍しくなく、自らの意思で「板東」から「坂東」に変えた家も多かったに違いない。こうして、徳島県には「坂東」という名字も増えていった。
坂東龍汰は米国生まれで、北海道出身。北海道には四国にルーツを持つ家も多く、「坂東」も多い。