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「〇〇社の部長」肩書きを失う日が来る…定年を意識した50代男性の不安 「老後うつ」を防ぐ鍵は【社会福祉士が解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

50代男性の佐藤さん(仮名)は、企業の管理職として勤務しています。一人息子が昨年春に大学を卒業、無事に就職も果たし、一人暮らしを始めました。これをきっかけに、佐藤さんは、自身が「定年退職」を意識するような年齢になったことに気づき、少しずつ不安を覚え始めました。

実はこのような感覚を持つ中年男性は多く、その不安を放置してしまうと、ゆくゆくは「老後うつ(老年期うつ)」の原因になると言われています。大切なのは、現役世代である50代のうちから戦略的に構築する「社会とのつながり(ソーシャル・キャピタル)」です。

なぜ「老後うつ」は起きるのか?

高齢者になってからのうつは、認知症の初期症状と間違われやすく「仮性認知症」とも呼ばれることがあります。その背景には「喪失体験」と「孤立と孤独」の問題があります。

①社会的役割の喪失(ロール・ロス)
長年、勤務してきた会社を退職することで「〇〇社の△△部長」という肩書や所属を失ってしまいます。また、家庭でも子どもが独立することなどがきっかけで「自己同一性の危機(アイデンティティ・クライシス)」に陥り「自分は必要とされていない」という無力感に苛まれることで、うつ状態に陥りやすくなります。

②心理的・社会的孤立
特に男性に多いのは、職場以外のコミュニティに属さないまま定年を迎えるケースです。退職することで人間関係が希薄になり、人とのつながりを失い社会的孤立(ソーシャル・アイソレーション)になります。

③心身機能の低下と健康不安
加齢によって、心身機能の衰えを実感したり、慢性疾患(高血圧、糖尿病など)を患うことによる心理的・経済的な不安がストレスの要因となります。加齢による脳の血流の変化(動脈の硬化など)も、精神的な不調のリスクを高める一因となります。

予防の要は50代からのつながり作り「サードプレイス」

老後うつ予防において、特に効果的なのは、家庭でも職場でもない第3の居場所「サードプレイス」を持つことです。サードプレイスは、利害関係のないフラットな関係性を担保してくれることで、精神的な安全基地となります。

おすすめのコミュニティ・参加形態

①地域サロン・居場所
各自治体の社会福祉協議会などが主催する「いきいきサロン」や「通いの場」です。地域住民同士の交流がメインで、近隣に顔見知りが増えるというセーフティネットの役割も果たします。

②趣味・生涯学習サークル
スポーツ、音楽、歴史探訪などがあります。共通の関心事があるため会話が弾みやすく、役割(幹事や会計など)を持つことで自己効力感が高まります。

③プロボノ・互助グループ
現役時代のスキルを活かしたボランティア活動(プロボノ)や、シルバー人材センターでの就労です。誰かの役に立つという「貢献感」は、メンタルヘルス維持に極めて有効です。

具体的な探し方

①自治体の広報誌・HP
地方自治体が開催する「生涯学習」や「市民講座」などの情報をチェックしましょう。また、公民館や地域包括支援センターなどのお知らせにも掲載されていることがあります。

②社会福祉協議会(社協)
社会福祉協議会は、地域のボランティアや地域交流イベントに関する情報を発信しています。また、福祉に関する講演会や研修会の情報も得られます。

③ポータルサイト
シニア向けSNSや、地域のNPO活動紹介サイトを活用しましょう。内閣府NPO法人ポータルサイトや都道府県・市区町村のNPO関連ウェブサイトからも探すことができます。

「一次予防」は生活習慣の見直しから

つながり作りと並行して、うつを発症しにくい脳と体を作る「一次予防」も重要です。運動・食・睡眠が主に重要となります。

①運動・日光:セロトニンの活性化
精神の安定に関わる神経伝達物質「セロトニン」は、日光を浴びることと、リズミカルな運動(ウォーキングなど)で活性化します。朝の散歩は特におすすめです。

②食:トリプトファンの摂取
セロトニンの材料となる必須アミノ酸「トリプトファン」を含む食材(大豆製品、乳製品、バナナなど)を意識的に摂取しましょう。

③睡眠:生活リズムの維持
不眠はうつの初期兆候であり、増悪因子です。できるだけ起床時間と就寝時間を一定にし、日中に活動量を増やすことで睡眠の質を高めます。

周囲ができる「ゲートキーパー」としての役割

もし、身の回りの人に対して「元気がない」「様子がおかしい」と感じたら、どのように関わればよいのでしょうか。

まずは、励ますのではなく「最近、眠れている?」「食欲はある?」など、生活の変化に目を向けてみて下さい。「心配しています」と直接、言葉で表現しなくても「あなたのことを思っています」という意思表示になります。

さらに、アドバイスや直接的な助言を伝えるよりも、本人の気持ちや状況を否定せずに理解する態度を心がけましょう。特に本人の「感情」に焦点を当てると効果的です。

また、「眠れない」「意欲がわかない」「四六時中、気分が落ち込む」などが2週間以上続く場合は、迷わず精神科や心療内科を受診するよう促しましょう。早めに対処することが悪化することを防いでくれます。

50代は「リ・デザイン(再設計)」の好機

佐藤さんも、仕事が休みの日は自宅でゴロゴロと過ごしていた時間を見直し、市が主催する「生涯学習」に参加することにしたそうです。そこでは、同じ学びに興味をもった「仲間」が見つかり、講座以外でも自主的な勉強会や食事会に参加するようになり、今までと違った充実感を味わっているそうです。

50代は、仕事中心だった人生を、地域や趣味を含めたマルチな人生へと「リ・デザイン」する絶好のチャンスです。その小さな一歩が、豊かで健やかなセカンドライフへの確かな投資となるはずです。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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