「俺に文句言うなら、稼いでから言え」→3年後に妻の収入10万円増 15年耐えて…別居できたのは「見知らぬ仲間からのエール」

宮前 晶子 宮前 晶子

「俺に文句言うなら、稼いでから言え」と言われた3年後…。

「今月のお給料、この日から10万増えましたー。泣きながらポストした3年前の私をビッグハグしてあげたい」

その3年前のX(旧Twitter)では、「産後から夫に対して子育てや家事の不参加への不満を口にする度、俺と同じぐらい稼いでから言えと言われてきた。そして今日、そんなに文句あるなら年内中に正社員で仕事探せ給料もあと10万は増やせと言われた。事あるごとに金銭面で脅しをかけてくる。しんどい、まじでしんどい。心臓バクバクする」と投稿していました。

そんな理不尽な言葉や態度から逃げ出すことができた女性のうれしい告白に、様子を見守っていたフォロワーや同じような境遇から脱出した女性たちから歓びの声が集まりました。

「俺より稼いでから言え」「誰の金で生活できていると思うんだ」は、妻の家事を顧みることがないモラハラ認定の言葉。いったいどうやって、そんな夫から逃げ出せたのか? 賃金が上がらないと嘆く声が多いなか、10万円も給料が上がったのはなぜなのか? 当事者のいちじくさん(@ww70ymk1)に取材しました。

子どもが生まれた直後から始まったモラ発言

現在、夫と別居し、子どもたちと暮らしているいちじくさん。夫からのモラ発言は第一子誕生後、20数年前に始まりました。実家も遠く新生児と2人きりの生活がいっぱいいっぱいだったため、夫に「なにか手伝ってほしい」とお願いしたところ、「俺より稼いでから」発言があったそうです。

それ以外にも、
・子供の夜泣き対応をたまには交代してほしいと頼むと「誰の金で飯食えてんねん」
・外で働くのを夫側から禁止されていたにも関わらず「お前はニート」
・ぎっくり腰で寝込んでいたら「家のこと何もしないんだったら死ね」
暴言は事あるごとに。

「家のこと何もしないんだったら死ね」発言が出たときは、「子供の前ではやめて」と言ったそうですが、「本当に思ってることだから、別に聞かれてもいい」と返されました。

そんな生活を続けること、約15年。夫は常に威圧的なわけではなく、普段は明るく楽しく会話をしていたため、たまのモラハラ発言には目をつぶっていました。

「私だけが我慢したら大丈夫、と黙って耐えていました」。しかし、同居生活の後半は、いつどこで怒りに触れるのかわからず、何かを言われるのが恐ろしいという心境で、普通の会話のときすら、反論できないようになっていました。

「夫は不機嫌になると私だけじゃなく、子供の呼びかけも無視するんです。家の空気がピリついて不穏になるので、とにかく怒らせないように機嫌を損ねないように顔色を伺いながら生活していました。怒らせてしまったら自分に非があるのかわからなくても、とりあえず謝るという最もダメな道を歩んでしまった」と後悔するいちじくさん。

義母に相談しても、「誰のおかげでこの家に住めて、子供たちは学校に行けてると思ってんの?」ととりつくしまもありませんでした。

モラハラに怯えながらのただただ重苦しい毎日。「息苦しくて、前向きなことなんて全然考えられなかったです。本当にひたすら地味に粛々と日常をこなしていると、いつのまにか時間が過ぎていった感じでした」。

夫も義母も味方ではない辛い毎日、SNSに感謝泣き

辛く苦しい中で、自分の胸のうちを吐き出していたのがTwitter(当時、現X)でした。「勉強も就職活動も真面目にしてこなくて、資格もなくてずっとバイトや派遣だった。今の仕事は好きやけどフルじゃない。お店も暇やからシフトも少ない。未経験歓迎の介護ならフルで募集があるけど、こんなんで応募しても介護なめんなよって感じよな。泣いて眼球が痛い」と苦しみを吐露。

すると、「うちも旦那と喧嘩したときに、俺の代わりに働けよと言われぶちギレ」「全く同じ感じ。2人目産んでから無資格で介護はじめました!ハードだけど、家での扱いに比べたら大したことない」「離婚してから保育士とりました。人生大丈夫。あきらめないこと。いちじくさんのミカタ」「看護師だってなれますよ!」など、エールが多数寄せられました。

当時を振り返り、「見ず知らずの私に共感してくれたり心配してくれたり、私の代わりに怒ってくれたりする方がたくさんいて本当にありがたくて嬉しかったです」。コメントは感謝泣きしながら何度も読み返していました。

また、家庭内で夫の言葉に意見すると、「お前は常識を知らない考えの甘い人間だ」と散々言われてきたいちじくさんですが、SNSでさまざまな人と交流することで「私の言うことや感じてることってそんなにおかしいわけじゃないんや!」と安心感も生まれていました。

そして、別居することを決意しました。

死ぬ時に首をかしげる人生はイヤ!

約半年前までは週3~4日の接客のパートとして働き、現在はフルタイムのパートで保育補助に従事。「子どもと関わる仕事に興味があったので、子育て支援員の資格を取って転職したんです。前の職場がとても居心地の良い職場だったので、資格を取ってから転職を決めるまでに2年かかっていますが、笑」。

給料の10万円アップは転職がきっかけ。「転職に至ったのは、お給料を増やしたいというより、“50歳前だし興味のあることをやってみたいな~何かご縁があればな~”ぐらいの軽い気持ちで。問い合わせしたら、ものすごい速さで進んで、あれよあれよという間に転職が決まりました。行き当たりばったりですね」。

別居も転職も劇的なきっかけがあったわけではないといういちじくさん。「無資格でたいした社会経験もないのに雇って頂いた職場で経験を積ませていただいたことは、“私、意外と頑張れるかも”という自信になりました。きっかけと聞かれれば、それがきっかけなのかもしれません」。

また、こんなことも教えてくれました。「誰の言葉か忘れてしまいましたが“死ぬ時に首かしげたまま死にたくない”。これを聞いたときは、まだ暗い結婚生活をおくっていましたが、めちゃくちゃ共感したんです。このまま私さえ我慢していたら家庭円満風だけど、じゃあ私は?と考えるようになりました」。

「明日突然この世から去ることになったら、私こんな人生でよかったんか?」という自分への問いには、「絶対に首を思いっきりかしげるやん」という答えしか出てこなかったそう。

「それなら、しんどいこともあるかもしれないけど、少しでも自分の納得いくように動いてみようと一歩を踏み出しました。今でもたくさんの方がモラハラに苦しめられてると思います。その方のペースで良いから、ちょっとだけ今と違うアクションを起こしてみたら、もしかしたら良い方向にいくかもです!」といちじくさん。

「毎日息苦しくて堂々巡りの思考で明るい未来なんか描けてないけど、あんた3年後はちゃんと笑えてるから!先が見えないことを大げさに怖がらなくていいよ、大丈夫!(そしてビッグハグ)」と、3年前の自分自身にも声かけ。それは、辛い状況に悩む人へのエールにもつながっているように思います。

■いちじく @ww70ymk1

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