心理戦を楽しむゲーム「人狼(じんろう)」をモチーフに、参加者の中から「いけずな京都人」を見抜くゲーム「京都人狼」が売り出された。「素直な京都人」たちの中にひそかに紛れ込んでいる「いけずな京都人」を、会話の微妙なやりとりの雰囲気から、見つけ出すのが醍醐味(だいごみ)という。ゲームの対象を「京都在住15年以上」とするなど、遊び心にあふれたグッズだ。
ない(大阪市)などが企画、販売。京都人の本音と建て前をユーモアたっぷりに紹介する「裏がある京都人のいけずステッカー」に続く第二弾のいけずグッズに位置づけられる。
まず参加者の1人を「よそさん」(よそ者)に決める。その上で、素直な京都人役と、いけずな京都人役に分かれる。
京都人役に「本音カード」を配る。1枚のカードには、素直な本音と、いけずな本音が併記されている。たとえば、「腰が低い/頭が高い」といった具合だ。
素直な京都人は「腰が低い」ことをそのまま褒める。
一方、いけずな京都人は、オブラートに包みつつ、あたかも褒めているかのような言葉遣いの中に「頭が高い」という本音をしのばせる。言い回しが思いつかない人向けの例文集では、「目上にも堂々としている」「えらい賢そう」といった表現が用意されている。
よそさんは、会話の微妙なニュアンスや言葉遣いから、「素直な京都人を装う『いけずな京都人』」を見破っていく。
京都人役は、「おおきに」や「~どす」などの、京都らしい言葉遣いをする。素直な京都人が心から褒めていても、「すべてがいけずに聞こえてしまう不穏な空気」(ない)をまとってしまうのが、ゲームの面白みの一つという。
実際にプレイしてもらった。扇子店「大西常商店」(下京区)の4代目で、京都人狼のイメージキャラクターを務める大西里枝さん(34)ら4人でスタート。よそさんは、大阪市で会社を経営する千種純さん(35)に。自己紹介や質問タイムを経て、人となりを知った上で、千種さんを褒めていく。
「最初に見た時、年上かなと思った」(大西さん)といった言葉に、「難しい。なかなか分からん」と千種さん。知人で、右京区の会社役員前田健太郎さん(35)が「言いにくいことも言わはる。(知り合ったばかりでも)数十年の友達のように突っ込んでくれた」と話すと、大西さんは「気遣いがない感じ? 厚かましいという意味やな」と混ぜっ返す。ちゃちゃを入れて、よそさんを混乱させていくのも、ゲームの妙味だ。
千種さんは、「年上」という表現などに違和感を持ち、いけずな京都人を務めた前田さんと大西さんを見事に見抜いた。いけずステッカーのモデルでもあり、SNSで「いけず女将(おかみ)」の名をほしいままにする大西さんは「苦手やわ、このゲーム」と一言。
2回目は前田さんがよそさんとなった。いけず役の大西さんは「仕事人感がすごい」とほめつつ、京都では「仕事が遅い」という意味を持つ「丁寧に仕事をしてくれはる」という言葉を紛れ込ませた。会話の自然な流れの中では気づかれず、大西さんは前田さんをだましきった。ゲーム後、大西さんは「実際はすごく仕事が早い」とフォローし、笑いに包まれた。
3回目は大西さんがよそさんで、「当てるよ」と意気込んだが、完璧には当てられなかった。いけず女将の名に似つかわしくない結果に大西さんは「本当はいけずじゃないから」と苦笑した。
ゲームを振り返り、千種さんは「相手のことをよく知れる。楽しかった。いけずを文化に昇華させているのが面白い」とし、前田さんは「頭を使う。京都で長年生きる僕でも難しい」と語った。京都人狼を企画した「CHAHANG(チャーハン)」(中京区)の役員で、ゲームに参加した日下部彩乃さん(33)は「どう言ったら相手を傷つけずに、いけず役として振る舞えるかを考えた。傷つけず、怒らせずに、どう伝えるかを考えることで、根っこに優しさを持つことを学べる」と話した。大西さんは「(会話術を)学んでこそ、いけずの使い手になれる」と言葉に実感を込めた。
京都人をいけずと表現することには一部で顔をしかめる向きもあるが、大西さんは「楽しく、人のことを知れるゲームです」と強調した。
なお、京都人にマウントを取られがちで、いけずに敏感という設定の「滋賀人」を紛れ込ませる応用プレイもできる。5千円。京都市内の土産店などで扱っている。