一般道が交差する上で行われた、高速道路の橋桁を架け替える工事。阪神高速道路株式会社(以下、阪神高速)としては近年にない大工事のクライマックスともいえる作業は、深夜にもかかわらず大勢のギャラリーが見守る中で行われた。同社に話を聞いた。
▽工事が行われた場所(Googleマップ) マップの中央「喜連瓜破」の表示がある地点で工事が行われた。
3年がかりの工事にゴールが見えてきた
阪神高速のX(旧Twitter)で9月15日に投稿されたタイムラプス動画が、再生数90万件に迫ろうとしている。交差点を挟んだ両側で分断されている高速道路に、巨大な橋桁を吊り上げて設置する作業の様子だ。
場所は大阪市平野区から住之江区へ東西に走る長居公園通と南北に走る国道479号線が交差する瓜破(うりわり)交差点の真上。動画は夜間、分断された高速道路の両側から作業用の「吊り上げ設備」がせり出す様子から始まる。
これは「吊り上げ架設」という工法で、あらかじめ設置済みの桁(両側に分断された端の部分)に吊り上げ設備を設置しておき、多軸台車で運んできた新しい桁を吊り上げる。
現場付近で組み立てられて台車に載せられた橋梁が道路上を運ばれてきて交差点で停止すると、高速道路の方向に合わせるために90度回転。南側と北側それぞれ4基ずつ設置された吊り上げ設備で吊り上げられていく様子が、30秒の動画に収められている。画面左上の時刻表示は2024年9月14日21:00からスタートして15日の02:00で終わっているから、タイムラプスの間だけでも5時間が経過していることになる。
「このような土木工事は、工事ヤード内で見えない中での施工が一般的ですので、新設桁を乗せた多軸台車がすぐ目の前を通過したり、大きな新設桁が持ち上がる吊り上げ架設の迫力を間近に見られたりする現場は非常に珍しいです」
Xのコメント欄には「これは凄い! めっちゃ凄い!」「カッコいい!」などの感動のほか、「お疲れさまでした」「こういうのを撮影して見せてくれるの感謝です」「夜間作業、無事故祈ってます!」といった工事関係者をねぎらったり感謝したりする言葉が多数投稿されていた。
想定より垂れ下がってしまった橋梁をかけ直す
これは、阪神高速14号松原線の「喜連瓜破付近橋梁大規模更新工事」として、2022年6月1日から行われている工事の最も重要な作業である。ではなぜ、あらためて橋桁をかけることになったのか。
「ここに高速道路を通すことが決まったとき、下にはすでに国道がありました。国道の通行を止めることなく工事を進める必要があったため、国道の両側に設置した柱から張り出しながらつくって、真ん中で繋いだ構造になりました。約40年が経過して、その構造部分が想定よりも大きく垂れ下がってきたのです」
垂れ下がりの程度は、その部分を走行する車のドライバーが体で感じるほどだったといい、下にワイヤーを張って対策を施してみたが、結局は「抜本的な対策が必要」という判断が下されて、工事が決行された。
「3年がかりの大工事は、近年ではなかなか例がないことです」
いちばんの難所を乗り切った感のある工事の完成予定は、2025年に開催される大阪・関西万博に合わせるため2025年3月末を目指すという。それでも、完成予定の時期にこだわりすぎて慌てることは、もちろん無いそうだ。どうか最後まで、安全に進むよう願う。
尚、この工事に伴う国道309号瓜破交差点及び喜連瓜破出入口の大規模夜間通行止めは、すでに終了している。
▽別アングルからの動画。吊り上げ設備がせり出す様子、道路上に引き出された橋桁が作業場所まで運ばれて吊り上げられる様子、上で作業する動作に至るまで克明に記録されている。
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▽阪神高速道路株式会社
https://www.hanshin-exp.co.jp/company/