実感はないけれど… 家計消費が1年ぶりに回復、給与も3%以上増加 最新の4〜6月期GDP速報から見る「私たちの暮らし」

新居 理有 新居 理有

家計の所得も高まり続けている

2024年4〜6月期には、実質の雇用者報酬は1〜3月期と比べて0.8%上昇していました。年あたりに直すと3%以上平均的な給与が増えるペースとなり、大きな成長です。雇用者報酬は生産活動を通じて、従業員が受け取る給与がどれだけあったかを表します。GDP統計を通じて、私たちが受け取った所得の大きさも知ることができるのです。

ただし、雇用者報酬が増えているからといって、個々人の給与も必ず増えるとは限らない点には注意が必要です。働く分野や雇用形態、働き方によって、給与の動きは大きく異なります。雇用者報酬は国民が受け取った給与の総額を表しているにすぎません。日本経済全体で所得がきちんと増えて行く方向にあるか、を見るうえで役に立つ指標です。

雇用者報酬は個人が受け取る給与だけでなく、社会保険料の企業負担分も含んだ指標であり、経済活動の動きを把握する上で重要です。雇用者報酬が安定して増えていれば、消費者の購買力が強まり、経済全体の持続的な成長を後押しすると考えられるからです。今後の財政政策や利上げを検討する際に、「きちんと賃上げが進んでいるか」がよく論点になります。賃上げが進んでいるかを判断するうえでも、これからの雇用者報酬の動きに注目です。

【参考】

▽内閣府「四半期別GDP速報 2024年4-6月期・1次速報(2024年8月15日)」
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

   ◇   ◇

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

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