昨年度の国の税収が72兆円を上回り、過去最高額となる見込みです。今のところ日本経済の調子が良いしらせであると言えるでしょう。最高額となった税収を使って、政府の取り組みを増やしてほしい、もっと減税してほしい、との声も聞こえます。しかし一方で、税金がたくさん集まったにもかかわらず、これからの日本財政は楽観視できないとも言われています。税収が順調に増えているのに、なぜ財政に不安があるのでしょうか。
将来の日本財政に対して慎重になるべき理由を2つ紹介します。1つめは、少子高齢化によって財政状況が厳しくなると見込まれることです。高齢化が進むことで、年金や医療は今後もますます必要です。一方で現役世代の人口は大きく減少していくため、財源となる今後の税収は減っていく傾向にあります。また、インフレが進むと実質的な税収が目減りするのがもう1つの理由です。税収が順調に集まっているうちに、将来の財政運営のあり方について議論を進める必要があります。
なぜ税収が過去最高額に達したのか?
まず税収が過去最高額に達した背景を見ていきましょう。令和5年度の決算概要の見込み(財務省)を見ると、税収は予算から2.4兆円程度上ぶれし、72兆円を上回りました。予算を上回る税収となった大きな要因は法人税と所得税です。法人税収は予算を7.6%上回り15.8兆円となりました。また、所得税も予算を3.5%上回り、21.8兆円の収入となりました。法人・所得税収の予想以上の伸びが、税収を過去最高に押し上げることに貢献しています。
法人税が予想以上に大きくなった背景には、企業の経常利益が順調に伸びてきたことがあげられます。法人企業統計(財務省)によると、新型コロナが広がった時期を除けば、経常利益は順調にのび続けています。その結果、令和5年度の経常利益は100兆円を超える大きさまで成長しました。その結果、法人税の課税ベースが増加し法人税収も伸びました。また、企業の活動が好調なのを受けて、所得や所得税収もあわせて増加したと考えられます。
一方で、消費税収はおおむね予算通りの金額でした。予算を上回る税収が得られたという意味では、消費税の影響は小さいようです。しかし、税収が過去最高になるほどに大きくなったのは、消費税の影響が大きいと考えられます。消費税はもっとも税収が大きい税目であり、また税収額の動きも安定しているためです。