大学無償化「子どもを3人育てるなら、学資保険は不要」と知人に言われましたが…本当に大丈夫でしょうか?【FPが解説】

八幡 康二 八幡 康二

2024年(令和6年)7月5日に文部科学省の公式サイトの「高等教育の修学支援新制度」にて、2025年(令和7年)度からの多子世帯の大学等授業料等無償化の概要が公表されました。概要によると多子世帯の学生等については、所得制限なく、大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで無償となる予定です。

自身も妻も3人兄妹の家庭環境で育ったこともあり、ライフプランとして「子どもは3人欲しい」と考えていたAさん(30代会社員)夫妻。そんなAさんは待望の第1子が誕生したことをきっかけに、今後の資金計画を考えるようになりました。

Aさん家族はお互いの両親と良好な関係にあり、子育ての支援も得られる状況です。しかし、子どもを3人養っていき学費を捻出するためには、効率の良い貯蓄が必要だと考え、学資保険に加入することにしました。

しかし、ある日知人にこの話をしたら「子どもが3人育ったら大学の授業料等が無償化されるよ。学資保険は入らなくていいんじゃない?」と言われます。その場では知人に対して「そうかもしれないね」と話したAさんでしたが、3人の子どもの高校までの教育費や、大学だけでなく専門学校へ進学する可能性も考えると、学資保険が不要とは考えられません。

実際に、授業料等無償化の恩恵を受けられるのであれば学資保険は入らなくて大丈夫なのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの篠田彰輝さんに話を聞きました。

ーそもそも学資保険ってどんなものなのでしょうか

毎月決まった額の保険料を積み立てていく貯蓄型の保険です。子どもの成長にあわせて、進学準備金や満期学資金を受け取れます。親が契約者となって保険料を支払い、子どもを被保険者に設定する場合が多いです。契約者に万が一のことがあったときには、それ以降の保険料の払い込みが免除されるという機能も持ち合わせています。

学資保険の払込期間は、10年や15年、子どもが18〜22歳になるまでなど違いがあります。期間を短くすると返戻率(支払った金額に対する受け取る金額の割合)が高くなりますが、毎月の掛金も高くなることが多いです。

ー授業料・入学金の無償化がされるなか、学資保険に入るべきですか

まず、授業料等が無償化されたとしても、教材費用などの費用や、一人暮らしをする場合の生活費などの、さまざまな場面でお金が必要になります。そのため、学費用としての貯蓄はしておくべきでしょう。

そして現状、保険や投資などで貯蓄をおこなっているのであれば、必ずしも学資保険をおこなう理由はありません。実際に、ライフプランの相談に来られた人には、学資保険ではなく別の資産運用がニーズに合うことが多いです。

ー別の資産運用というとどのようなものがありますか

学資保険の満期は、商品にもよりますが、もっとも長くても子どもが22歳になるタイミングです。学資保険にこだわらなければ、満期までもっと長い期間を設定できる養老保険、または終身保険を提案します。こちらであれば、子どもの結婚資金であったり老後の資金を見越した積み立てが可能です。

ー無償化の恩恵が受けられない場合に、学費を用意するにはどうしたらいいでしょうか

ひとつは教育ローンです。教育ローンには国の教育ローンと、金融機関の教育ローンがあります。また奨学金を利用するのもいいでしょう。

奨学金は大学卒業して返済していくため、計画的に利用しないと就職後に苦労するという声も耳にします。ただ給付型のものがあったり、一定の条件を満たせば返還が免除される場合もあります。

また子どもが中学校卒業まで支給される児童手当を、コツコツ貯めておき、こちらを原資にして、保険を含む効率的な資産運用をされてもいいでしょう。

いずれの場合も、ライフプランを作成して、計画的な資産形成や、それぞれの商品の特徴を活かして、効果的な資産運用をおこなうことをおすすめします。

◆篠田 彰輝(しのだ・あきてる)2級ファイナンシャル・プランニング技能士 小・中学生3人息子を持ち、自身の体験も踏まえたライフプランニングが好評。また趣味である落語をビジネスに活用するセミナーも実施している。

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