早い列に入れるって…それが少子化対策といえるのか 「こどもファスト・トラック」に感じる政府のズレっぷり 豊田真由子「余計な社会の分断招く」

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

コンセプトがズレてる

政府は、「こどもファスト・トラックで、待ち時間を短縮し施設を利用しやすくすることで、『こどもや子育て中の方々にやさしい社会』を目指します。」と言っています。

もちろん、「子育てにやさしい社会の実現」は「ぜひお願いしたいこと」なわけですが、子育てのいろいろなことが本当に大変な中で、「これで、そんなに胸を張られても…」というか、ワンオペ育児や、仕事との両立や、成長するにつれて増大する教育費や、高騰する生活費の負担等など、「“やさしくしてほしい”と切望するところ」は、ほかにもたくさんあります。

「こどもファスト・トラック」は「公費がかからず実現できて、政府に労無くして、大きなアピールになるからかな…」と邪推したりします。

昨年6月に連載に書いた「子育て負担を軽減→子どもが増える…政府の方針は“幻想” 『今を生きる人』を幸せにできない国が、少子化対策などできるのか」でも述べた通り、様々な子育てにかかる国民の負担軽減は、決して「子どもを産ませるために」行うべきものではありませんし、「何らかの対策を講じれば、子どもがバンバン増える」という考えは、幻想にすぎません。当事者の真情を理解しない、政府の押し付けがましさや、あるいは選挙対策かのようなおもねる姿勢を、国民はシビアに見ていると思います。

インタビューでは、「早い列に入れるからって子どもを産もうとは思わない」「そこじゃない。教育無償化や医療の負担軽減をしてほしい」という声もありました。

日本は子育てのしにくい国?

「自国は子どもを生み育てやすい国だと思うか」との問いに、スウェーデン97.1%、フランス82.0%、ドイツ77.0%が「そう思う」と回答しているのに対し、日本では「そう思わない」が61.1%となっています(内閣府、2021年3月、20~49歳の男女1372名回答)。

私は、初めての出産・子育てを、赴任中の欧州で行い、あちらの環境が基準になっていました。ですので、帰国した直後の日本の空港で、子どもと荷物を両手に抱えて(ベビーカーは、搭乗前に預けていて、まだ無く)、空港スタッフの方に「優先レーンはどこにありますか?」と聞いたところ、「そんなものはありません。あちらに並んでください」と長い列を指さされ、「そうか、日本はそういう国だったか~」と、ハッとし、その後も随所で、(聞いてはいましたが)「日本は子育てに厳しい国」であることを、実感しました。

「子連れだと肩身が狭い」などの声もあり、「日本社会の意識・雰囲気が子供を生み育てることをためらわせる状況にある」ともされています(「こども未来戦略方針」(2023年6月13日))。

実はこの「社会の意識・雰囲気」というのが、大きなポイントです。

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