遺されたペットの行く末、考えていますか 高齢者のペットをめぐる相続問題と、「信託」という選択肢【弁護士が解説】

猫・ペットの法律相談

石井 一旭 石井 一旭

そこで、信託制度を利用することをお勧めします。

信託とは、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条1項)。要するに、自分の財産を信頼できる人に託し、定められた目的のためにその財産を管理してもらうという契約です。信託は契約なので相続からも切り離すことができますので、この制度を利用すれば、ペットが生きていく上で必要な財産を、ペットのために残しておくことが可能となります。

具体的には、まず、何かあったときにペットの世話をしてくれる人(「受益者」といいます。)と、ペットのための財産を管理する人(「受託者」といいます。)を探します。いずれも、身の回りでペットや財産を預けられるような信頼性の高い人物を選択しなければなりません。なお、弁護士は信託業法上、信託契約の受託者になることはできないとされています。そこで、受託者は原則として親族の中から選ぶことになるでしょう。

ペットのために財産を残したい人(委託者)は、受託者との間で信託契約を締結して、ペットの飼育に必要な財産を受託者に渡します。委託者に万一のことがあって、ペットを飼えなくなった場合は、受益者にペットの所有権を引き渡し、受託者は信託財産の中から受益者に対して、あらかじめ契約の中で定められたとおりにペットの飼育費用を支払っていきます。

たとえば、事情によりペットを飼えない自分の子どもを受託者にして財産を預け、飼育に慣れた友人や愛護団体が受益者となり、ペットの飼育をしていく、というような形が考えられます。受益者が適正な飼育をしているかどうか、受託者が適正な資産管理をしているかどうかを監督するためには、信託監督人を選任しておくことがよいでしょう。信託監督人は、管理業務に長けた弁護士などの法律の専門家に依頼することが望ましいです。

自分の死後のペットの行く末が心配な方は、信託という手段が取れないか、検討してみて下さい。信託契約は複雑でありまた正確性が強く求められますので、弁護士などの法律専門家に相談することをお勧めします。

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