愛犬の治療費が高額すぎて…「クラウドファンディング」でまかないたいけど、法律的に大丈夫?【弁護士に聞いた】

猫・ペットの法律相談

石井 一旭 石井 一旭

人間と違ってペットには皆保険制度がないので、全額自由診療・自己負担となります。また、獣医療もどんどん高度化・専門化してきており、ペットの寿命もどんどん伸びています。そうなってきますと、獣医療費が高額化していくことは避けられない話です。

京都市内で弁護士事務所を開く私のところにも、「迎え入れた愛犬・愛猫が重病だったことがわかり、専門医療機関への入院で治療費が100万円を超える見込みだがどうしたらよいか」といったご相談が時々寄せられます。

この高額の医療を工面する方法のひとつとして、クラウドファンディングによる医療費調達の是非を調査したところ、約半数の人が賛成と回答(※)したとのことです。そこで今回はクラウドファンディングの法的意義についてお話したいと思います。

(※)株式会社PLAN-Bが運営をする「INUNAVI(いぬなび)」が2022年4月に行った「愛犬の治療費に関するアンケート」。「愛犬の治療費にクラウドファンディングや寄付を募る行為をどう思いますか」と聞いたところ、「どちらかといえば賛成」(29.3%)、「賛成」(23.3%)を合わせ、52.6%の人が「賛成」と回答した。

クラウドファンディングとは

そもそもクラウドファンディングとはどういったものでしょうか。

クラウドファンディングとは、資金を集めたい者(個人の場合もあれば、企業の場合もあります)が、インターネットを通じて、目的を示して、その目的に関心を抱いたり支援したいと考えたりする不特定多数の人達から資金を集めることをいいます。

従来、資金調達の手段としては、銀行などの金融機関・消費者金融からのローンや、家族・友人などの援助をお願いすることなどがありましたが、それらに頼ることができない人であっても、インターネットを通じて、目的に共感を示した不特定多数の人から幅広く資金を調達できる点がクラウドファンディングの特徴です。

クラウドファンディングには、純粋に寄付を募るだけの「寄付型」もあれば、集めた資金の対価として製品やサービスの提供を優先的・独占的に受けられるようにする仕組み(「購入型」と呼ばれます)もあります。

ペットの治療費をクラウドファンディングで集めてもいいのか

高額なペットの医療費をクラウドファンディングで集める方法は、基本的には「寄付」を募る形になるでしょう。

寄付型のクラウドファンディングは、結局のところ、インターネットを使って不特定多数の人達から資金の贈与を受けているわけですから、法的性質は贈与契約になります。贈与契約は、資金提供者が自由に自分の意志で行う単独行為であり、法律上の規制がかかることはありません。

したがって、クラウドファンディングでペットの治療費の寄付を募ることは法律上なんの問題もありません。最初にも申し上げたとおり、ペットの治療費に100万円以上かかるケースもあります。貯金が足りない場合、資金繰りに不安がある場合など、クラウドファンディングの利用を検討してみてもよいでしょう。

なお、資金を受け取った人については、個人から寄付を受けた場合は贈与税の、法人から資金を受け取った場合は所得税(一時所得となるでしょう)の問題が発生します。贈与税には年間110万円の基礎控除が、一時所得には50万円の特別控除制度が設けられていますので、寄付を受けた金額がこれ以下であれば納税の問題は生じません。

また、生活保護受給中の方がペットの治療費に充てるために寄付型のクラウドファンディングで資金を集めた場合、「収入」とみなされ、生活保護の減額や金額によっては生活保護が停止・廃止となる可能性もありますので、生活保護受給中の方がクラウドファンディングを利用する際には注意が必要です。

「返礼品」をお渡ししてもいいのか

寄付金を使って治療したペットが回復したことで、寄付してくれた人たちにお礼を送りたいという人もいるでしょう。また、少しでも多くの資金を調達するため、返礼品を用意することを検討する方もいるかも知れません。

お礼の手紙やペットの写真をお返しするなど、返礼品の内容からみて寄付金との間に対価性がないと考えられる場合は「寄付型」として考えて良く、特に問題は生じません。

対価性があると考えられる場合、例えば寄附金額に応じて自宅で採れた野菜や果物、生産した商品を返礼するとか、整体師さんがマッサージを、美容師さんがカットを無料にするなどのサービスの提供を行うような場合は、クラウドファンディングは「寄付型」ではなく「購入型」と判断される可能性があります。

「購入型」の場合、インターネット上での商品等の販売という要素があるため、「通信販売」に該当し、特定商取引法の規制がかかってきます。このように相当の対価を交付したい場合は、クラウドファンディングの場を提供しているプラットフォーマーを利用するのがベターでしょう。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース