避難所に置き去りにされた犬 飼い主は「保健所に連れて行ってくれたらいい」 被災地のペットの過酷な現実

渡辺 陽 渡辺 陽

能登半島地震の発生から1カ月が過ぎた。避難生活や復旧作業が続く中、被災したペットたちを支援するボランティアも活動を続けている。この間、直面してきたのは厳しい現実だった。

避難所の外に繋がれたまま暮らす犬たち

 

Yoichi Saitoさんは能登半島地震の発生から6日後、被災した犬や猫のレスキューのために石川県珠洲市に入った。珠洲市の蛸島小学校を訪れると、避難していた人が連れてきた犬が何匹か繋がれていたという。

「同伴避難といっても、室内に入れるわけではなく、外に屋根付きのケージがあるわけでもなく、当時、犬は避難所の外にリードで繋がれていました」

その後、珠洲市に住むFさんから、避難所にいたラブラドールレトリバー「シロちゃん」のことで相談があるとSaitoさんのところに連絡が入った。

行き場をなくして「保健所につれて行ってくれたらいい」

SaitoさんがFさん宅を訪ねてみると、そこにシロちゃんがいた。シロちゃんはFさんが避難所から連れてきた犬だった。

「飼い主さんは別の人で、自分だけ家に帰ってしまったそうです。行き場をなくしたシロちゃんをFさん家族が連れて帰ってくれました。Fさんを通じて、飼い主さんにシロちゃんを引き取れないのかと尋ねても、『保健所に連れて行って殺してくれたらいい』という一点張り。何度か尋ねてもらいましたが、全く話にならないので私が引き取り、大きな保護団体に繋いで医療にかけてもらいました」

 

シロちゃんは10歳くらいだったが、身体にはいくつも腫瘍ができていた。現在、治療をしながらシェルターで暮らすか里親を募集するか検討中だという。

飼い主の家は被災して倒壊したわけではない。ただ、憶測ではあるが、「地震が揺すって一時避難した」というのは、シロちゃんを手放す格好の言い訳になったのではないか。Saitoさんは「腫瘍ができていたら体調にも何らかの異変があったはずです。気づかないということはないと思います」と話す。

「殺してくれたらいい」などと言う人の元に帰ってもシロちゃんは幸せにはなれない。しかし、シロちゃんは飼い主のことを忘れるだろうか。

Saitoさんは言う。

「動物にも心がある。僕はメンタル面をケアすることしかできないけど、みんなかけがえのない命だということは分かってほしい」

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