2時間の追いかけっこの末に保護された迷子犬 預けられた警察では何も食べず保護団体へ 「頑固だから」スタッフは譲渡まで長期戦を覚悟した

松田 義人 松田 義人

2023年春のある日の夜、東京・足立区のとある公園で、和犬とおぼしきメスのワンコがリードも何もない状況で歩いていました。目撃した近所の人が、近くにある保護犬カフェ・PETS(以下、PETS)に助けを求めました。

「ちょっと来てください。どこからか脱走した犬が公園を歩いているんです」

PETSのスタッフはこの日、地方で保護されたワンコを引き取りに羽田空港まで行っていました。ちょうどクルマから降りるタイミングで、その話を聞かされましたが、放っておくわけにはいきません。その足で迷子の犬の保護に向かいました。

「野犬に比べれば、あなたなんか余裕よ!」

すぐにそのワンコを見つけることができました。しかし、近づこうとすれば逃げていくし、気がない素ぶりを見せれば近寄ってきます。人間と遊んでいるような迷子犬でしたが、スタッフは慌てません。過去にも脱走ワンコを保護したこともあり、さらに、この迷子犬は元飼い犬とおぼしきワンコです。「野犬に比べれば、あなたなんか余裕よ!」とこの迷子犬の保護に挑みました。

スタッフによると、逃げるワンコを保護する場合、「挟み討ちできる場所」に追い込むことが良いとのこと。このことから壁のある場所にまで迷子犬を誘導したそうです。

投げ縄式保護で無事保護

この迷子犬も負けません。追い込みを巧みに避けるように逃げていきます。途中、迷子犬が車道に出てしまった際にはスタッフが『101回目のプロポーズ』風に、クルマを止めたそうです。

約2時間にも及んだ追いかけっこの末、迷子犬は「挟み討ちできる場所」に入っていってくれました。が、いかにも噛みつきそうな雰囲気を醸し出しているため手で保護するのは危険が伴います。そこでスタッフが考えたのが投げ縄式の保護。スリップリードの輪の部分を大きめにし、何度か投げたところこの迷子犬にハマり無事保護することができました。

「事故などに遭わなくて本当によかった」……ホッと胸を撫で下ろすスタッフでしたが、前述の通り、PETSは新たな保護犬を迎えいれたばかりです。キャパシティの問題もあり、この迷子犬を引き取るつもりはありませんでした。

そのため、最寄りの警察に預け、飼い主さんが現れることを期待していましたが、数日経過しても現れず、さらには迷子犬は、警察で全くご飯を食べなかったそうです。

やがて警察の預かり期限を迎えた翌日スタッフの元に警察から電話がありました。「PETSさんのところでお願いします」とのことで、スタッフは保健所に送られるのだけは避けたいと、引き取ることにしました。

里親希望者さんが現れた

スタッフはこの迷子犬を「ひらりちゃん」と名付け、避妊手術を施すことにしました。そして、新しい里親さんを探し第2の犬生へと繋げていきたいと決意しました。

あの大捕物のように、ひらりちゃんはいかにも和犬気質で、知らない人にそうそう気を許すことはなく、ときにカプカプと噛みつこうすることもある一方、「この人は許す」と思った人にはどこでも触らせるとも。

やや頑固な面もあるひらりちゃんなので、新しい里親さんへの譲渡には相応の時間がかかることを覚悟していたスタッフですが、あの大捕物から約3カ月後の6月。ついに優しい里親希望者さんが現れ、無事第2の犬生をおくることになりました。

PETSを卒業する際の、ひらりちゃんはあの大捕物の際とは違い、どことなく笑顔を浮かべているように映り、スタッフもおおいに喜びました。そして、様々なバックボーンを持つワンコを、1頭でも多く幸せな生活へとつなげていきたいと、その思いを改めて強く抱きました。

保護犬カフェ・PETS
https://ameblo.jp/pets-adachi203/

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