阪神タイガースとオリックス・バファローズによる59年ぶりの関西対決が実現することになった今年のプロ野球日本シリーズ。ただ、その歓喜の裏で少し寂しい事態が起きていました。
それは阪神タイガースがCS突破を決めた20日夜、熱狂的な阪神ファンが多く、「日本一早いマジック」などで知られる兵庫県尼崎市で、市などが開いた無料のライブビューイングでのこと。ファンらがCS突破に喜びを爆発させる一方で、会場の前の方を中心に、ぽっかりと空席が…。チケットは2日で「満席」になったはずなのに…?
ライブビューイングは、タイガース2軍施設が2025年2月、同市内に移転オープンするのに向けて機運を盛り上げようと、市や尼崎商工会議所などが第3戦と第6戦に初めて企画しました。2003年と2005年の阪神のリーグ優勝時には、地元商店街などが阪神尼崎駅前の広場でパブリックビューイングを開催。約5000人が詰めかけ、広場から人があふれるほどになったことから、今回は警備や安全上の問題を考慮し、同駅に近い市中小企業センター1階フロアを貸し切り、飲酒・食事は禁止で行うことになりました。
CSファイナルが行われた阪神甲子園球場(西宮市)のチケットはプラチナ化。それでも「なんとか皆で応援し、勝利を見届けたい」というファンも多く、応募できる人を同市在住・在勤・在学の人に絞ったものの、市の専用サイトには10月13日午後1時の受付開始直後から続々と申し込みがあり、15日夕方には300席が満席になったといいます。
が、試合が始まってみると、中盤の5回の攻防が終わった時点でも空席が。一方、市へのキャンセルの電話は12~13件(うち前日までは2~3件)で、複数確保した人を入れてもせいぜい約20人分。座席は受付番号順としたため、キャンセルかどうか分からないままでは詰めることもできず、結果、前方と中央付近にぽっかりと空席が生まれてしまうことになりました。
「多少は出ると思いましたが、まさかこんなに多いとは…」と市の担当者。「無料だったのと、3人まで申し込める形にしたので『とりあえず押さえるだけ押さえよう』という人が多かったのかも」と話します。市の他のイベントではこれほどのキャンセルの経験はなく、システムにはキャンセル待ちなどの設定もありませんでした。
「平日なので急な仕事が入った人もいたのかもしれません。でも、いつか来られるかもしれないと思うと座席も変えられませんし、せめて連絡を頂けたらいろいろ対応できたかもしれないんですが…」(同前)。会場は9年ぶりの日本シリーズ進出を祝い38年ぶりの日本一を期待するファンらがバンザイとハイタッチをし合い、選手の応援歌を歌い上げるなど大盛り上がりだっただけに、少し複雑さが残る結果となりました。
市によると、日本シリーズのライブビューイングは放映権の手続きが間に合わず開催できないといい、尼崎での今季のライブビューイングはこれが「最初で最後」だったそうです。市は「次は来年以降になってしまいますが、連覇を達成した時には改善できるようにしたい」と話しています。