60歳以降の雇用継続…低くなる賃金を「補填してくれる制度」をご存知ですか 知っておきたい「高年齢雇用継続給付」【FPが解説】

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給付額の計算方法

それでは、「高年齢雇用継続給付金」の具体的な支給額を算出するにはどのようにしたらよいかを見ていきましょう。なお、「高年齢再就職給付金」の支給額も「高年齢雇用継続給付金」と基本的に同じ計算方法で算出します。

まず、高年齢雇用継続給付金の最高支給率は15%で、60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は全て対象となります。また、61%以上75%未満までは、細かく支給率が定められています。

 支給率をもとに以下の計算式に当てはめると、具体額を算出することができます。

   ◇   ◇

【高年齢雇用継続給付金の計算方法】
60歳以後の賃金月額 × 60歳到達時から60歳以後の賃金低下率に応じた支給率

   ◇   ◇

なお、60歳到達時の賃金月額の計算方法は以下の通りです。

~60歳到達時の賃金月額計算方法~
(60歳に到達する前6カ月間の総支給額 ÷ 180日) × 30日

単純に60歳到達時の賃金月額ではなく、「半年分の平均賃金」となりますので、注意が必要です。

▽賃金低下率の計算方法

60歳到達時の賃金月額が計算できたら、それをもとに60歳以後の賃金低下率を個々のケースに応じて別途割り出します。わかりやすい例を挙げると次のようになります。

   ◇   ◇

【例①】60歳以後の賃金月額が半分になった場合

・60歳到達時の賃金月額…300,000円
・60歳以後の賃金月額…150,000円

このときの低下率は半分、つまり50%になりますので、61%以下ということで支給率は最高の15%となります。

【支給額】
150,000円 × 0.15 = 22,500円

したがってこの場合は支給額を加えて、月に172,500円を受け取ることができるということです。

   ◇   ◇

【例②】60歳以後の賃金月額が61%以上75%未満の場合

・60歳到達時の賃金月額…350,000円
・60歳以後の賃金月額…252,000円

このときの低下率は、252,000円÷350,000円=0.72 で72%となります。厚生労働省ホームページに掲載されている早見表で、低下率72%の欄を確認すると、支給率は2.72%です。

【支給額】
252,000円 × 0.0272 = 6,800円

この場合は支給額を加えて、月に258,800円を受け取ることができますが、例①と比べると支給額自体は少ないことがわかります。

   ◇   ◇

このように、低下率によって支給額には大きく差が出てきますので、まずは自分がどれぐらいもらえるかを実際に計算してみましょう。

給付金受給の際の注意点

▽雇用保険の基本手当(失業保険)よりも給付金のほうが少ない場合もある

実際に計算してみるとわかる通り、賃金の低下率によっては支給額が少額になることもあり、場合によっては高年齢雇用継続給付金を受け取って雇用継続するよりも、会社を辞めて失業保険(雇用保険の基本手当)をもらったほうが、金額が高くなることがあります。その後再就職したほうが、トータルで多くもらえる場合もあるでしょう。

高年齢雇用継続給付の申請は基本的には会社側が行うことになっていますので、会社のほうで計算をしてくれることが多いのですが、会社によってはもしかしたらきちんと明示してもらえない場合もあるかもしれません。

より確実に、きちんとした給付を受け取ることができるよう、自分でも賃金の低下率と支給率を確認しておき、比較検討したほうが良いでしょう。

▽2025年以降に支給率の改正あり

もうひとつ覚えておきたいのが、支給率の改正についてです。

冒頭でも雇用保険制度が見直され続けていることについては触れましたが、実はもう既に2025年の4月に新たに改正されることが決まっています。

高年齢雇用継続給付金の最高支給率は現在15%ですが、2025年4月からは雇用保険制度改正により、10%に変更されるのです。

改正の背景には、高年齢者雇用安定法により段々と定年の延長および廃止といった継続雇用努力が行われ、高齢者でも長く働くことが浸透してきたことがあります。将来的にはさらに縮減されていくことも予想されます。

実際に、現在の最高支給率15%という規定も2003年に改正されたもので、2003年の改正以前はなんと25%と、もっと高かったのです(支給上限である75%未満という規定も、2003年改正以前は85%未満でした)。

とはいえ、まだまだ給付自体がなくなることはありませんので、ぜひ今こそ積極的に活用していきたい制度には違いありません。

今こそ制度の活用を

あらためて、高年齢雇用継続給付のポイントを以下まとめます。

   ◇   ◇

・高年齢雇用継続給付は、60歳から65歳までの賃金の低下を補う制度
・高年齢雇用継続基本給付金と失業保険(雇用保険の基本手当)の併給は不可
・60歳以後の賃金の低下が低い場合には、失業保険を受給したほうがお得な場合もある
・2025年4月以降は支給率の改正あり。今こそ活用どき!

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60歳以降も働き続けなければいけないということは大変なようですが、今は平均寿命も延び、60代はまだまだ若く「高齢者」と言うには違和感を覚えるほどに変わってきています。実際に、元気なうちは働き続けたいと思う人の割合も増えているようです。

高年齢雇用継続給付は、そのような長く働きたい人たちを後押しする支援のひとつです。改正で今後縮減傾向ではありますが、そんな今だからこそ積極的に活用し、少しでも多く手元に残せたら良いですね。

一方で、現在まだ若手である人たちにとっては、こういった制度が縮減されていくということを考慮し、今から備えることが必要になっていくでしょう。

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