7月上旬、江崎さんの姿は府民ホール・アルティ(上京区)のステージにあった。人前で歌うのは4年ぶり。
「少しずつ復帰しているところです」とさりげなく、お客さんに告げた。
1曲目。「さらりとした梅酒」をつややかに、かつ即興でスキャットを交えて情念を込める。
2曲目は、あのポケモンの「神曲」。ピアノ、フルート、杜若さんのパーカッションに合わせて、府民ホール・アルティに響いた歌声は、まるで魂の叫びのように聞こえた。
♪頬なでる風が きっと言うから
「転んでもいいさ 君は君がすてきさ」
傷つかぬ者に 青空は見えない
迷い歩むたび 生命(いのち)は輝く
実は歌っている時も、症状は消えていなかった。ステージで口の感覚がなくなっている自分に気づいていた。それでも笑えた。
「直前まで出演を辞退することも考えていたんです。でも人前に立ったら何十年もやっているので(経験が)助けてくれた感じですね。苦しい中で歌っている自分を客観視できた。いい経験、おもしろかったですよ。究極すぎて」
京都と東京での短い滞在を終え、7月17日にカナダへ帰国した。24時間ずっと痛みはある。症状自体は良くなっていない。これから先どうなるかわからない。けれど、新しい作品をどんどんつくっていきたい。
やっぱり私はミュージシャン。そんなことは再確認できた。
ユーチューブに自身のチャンネルがあり、「そこに空があるから」を歌っているライブ動画もアップしている。一部のファンから「神曲」と言われていることは、もちろん知っている。
20年前にこの曲のオーディションに合格したとき、「こんな名曲を私が歌っていいんやろか」と正直思った。でも今は、歌詞と自分の姿がシンクロする。
「人の人生に影響しているし、その使命をちゃんと持っておかないといけない。自分が歌っていて励まされることも、いっぱいあります。音楽って本当にすごいと思いますね」
♪傷つかぬ者に 青空は見えない
多くの人に共感を呼ぶ「神フレーズ」だ。私もいっぱい傷ついた。だからこそ見えた青空もある。あの歌はそっと教えてくれている。
江崎さんの公式ユーチューブチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCNqVdB3stnwUaIZu5loNQXA