飼い主が亡くなり、引き取った息子が脳梗塞で倒れて… 保護して猫に伝えたときに見た「忘れられない反応」

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

兵庫県明石市の山陽電鉄・西新町駅前にある「保護猫かふぇ あすなろ」。3階建ての店は1階が飲食、2階はジオラマを楽しめるスペース、3階が人気の屋根裏部屋になっており、2、3階で常時20匹ほどの保護猫たちと触れ合うことができる。四柱推命のカウンセラーでもある代表の新田彩貴さんは、猫店長の「ちーちゃん」(メス、推定16歳)をはじめ、これまで数多くの猫たちを保護。里親さんとの縁を結んできた。ちーちゃんとの出会いや、経営が厳しいながら続ける猫カフェのことなどについて、新田さんに胸のうちを聞いた。

もともと「にゃーにゃー」とよく喋る子だったのに

新田さん ちーちゃんとの出会いは、私がここで保護猫シェルターを始めてまもなくのころでした。もともとは60代男性の母親の飼い猫で、その母親が亡くなり、息子であるその男性が引き取ったのですが、男性が脳梗塞で倒れてしまって。その妹さんが「兄の猫をどうしたらいいか」と私のもとに相談にきたため、預かることにしたんです。

うちにやって来たとき、ちーちゃんは凶暴でね。ほかの猫とも仲良くできませんでした。おそらく大好きな男性と離れたのが嫌だったんでしょう。もともと「にゃーにゃー」とよく喋る子だったのに、ここに来てからはあまり喋らなくなっていました。そんなちーちゃんに私はよく話しかけました。「お父さん(男性)はいま病気で入院してるけど、きっと元気になってまた一緒に過ごせる日がくるから、それまでおばちゃんとここにおろな」って。 

声をかけ続けているうちに、凶暴やったちーちゃんはだんだん落ち着いてくれました。しかし、一時は施設で車椅子生活を送っていた男性は、やがて帰らぬ人となりました。私はちーちゃんにこう語りかけました。「お父さんな、もうちーちゃんの世話、できへんようになってしもてん。先に天国で待ってるって。これからはここでおばちゃんとずっと一緒に暮らそな」と。

言葉のトーンで状況がわかったのか、そのときのちーちゃんの横顔が今も忘れられません。なんて表現したらいいんですかね。「私、ここで一人で生きていくしかないんや」っていう諦めと寂しさと覚悟が入り混じったような横顔やったんですよ。

ちーちゃんは野良だったわけではなく、もともと家庭の温かさを知っている子。そんな子が家族を亡くし、ここで生きていくと覚悟めいた表情を浮かべている。それを見たとき、ああ、私もちーちゃんや他の保護猫たちのために、腹をくくり覚悟してやらなあかんと思いました。縁あってうちにきた子たちを全力で守っていこうって。そう強く感じた瞬間でした。もしあのとき、ちーちゃんがそういう気持ちにさせてくれなかったら、こうして今日まで保護猫活動を続けてこられなかったかもしれません。

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