「目的地に対しての距離が徒歩の時間で書かれているのはなぜ」「歩いて何分という表現はあまりにも主観的すぎ、結局よく分からないと思います」。京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に、京都市内に設置された観光案内の標識に対しての疑問が寄せられた。果たしてなぜ「徒歩○分」という表記になっているのか。
京都市内では観光地や主要駅まで、徒歩での所要時間を記した標識が多く設けられている。投稿には中京区六角富小路の標識の写真が添付されていた。現地に行くと、六角富小路交差点の南東角に黒い標識があり、「烏丸通7分」「御池通6分」などと記されていた。確かに具体的に何メートルなのかは分かりにくく感じる。
別の日、京都有数の観光地である嵐電(京福電鉄)嵐山駅(右京区)付近でも黒地に白文字の標識を見ることができた。電車のピクトグラムとともに「嵐電(嵐山駅)3分」「JR(嵯峨嵐山駅)12分」などの文言が日本語と英語で表示されていた。
こうした標識はどの機関が設置しているのだろう。あたりをつけて京都市観光MICE推進室に聞いてみると、やはり受け入れ環境整備事業の一環で同室が整備しているとのことだった。
正式には「京都市観光案内標識」というらしい。いずれも黒を基調としたデザインで4種類あり、地図のついた比較的大型の「案内サイン」をはじめ、「誘導サイン」「通り名サイン」「複合型通り名サイン」に分けられるという。
4種類の標識は2011年9月以降「京都市観光案内標識アップグレード指針」に基づいて京都市によって設置されており、京都市内に約730基あるという。
なぜ観光地までの近さは徒歩の所要時間で表記されているのだろうか。市観光MICE推進室によると、距離の単位はマイルやメートルなど国によって異なるため、徒歩の所要時間で記している。しかも、その時間は分速70メートルで計算しているという。
不動産の広告でも「駅徒歩〇分」といった表記を見かける。不動産業の業界団体「不動産公正取引協議会連合会」のホームページによると、不動産の場合は「距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出」としている。つまり分速80メートルだ。それよりゆっくりな分速70メートルなのはなぜなのか。
市観光MICE推進室は「歩いて京都の町を観光して楽しんでもらうため、少し遅めに設定しています」とする。
距離表示でなく徒歩の所要時間表記になっていることについて、問い合わせはないのか。「この5年ほどでは昨年に1件あったのみ」といい、市民や観光客には浸透しているといえそうだ。
さて、観光客の利用が多い嵐電嵐山駅を出るとすぐの場所に、白地に青い文字で「天龍寺80m」などと記したメートル表記の標識が設置されていた。駅を降りた観光客は重宝しそうだ。
でもなぜ、メートル表記の標識が存在するのか。市観光MICE推進室は「それは古いタイプの標識で、自動車に向けて掲示しています」と回答する。
つまり、同じ京都市が設置した観光地案内でも徒歩時間表記とメートルの2タイプがあることになる。表記の変更や統一、今後の増設はあるのだろうか。
市観光MICE推進室観光企画課の西前里江子課長は「白地に青文字のメートル表記の標識は自動車向けなので用途は異なります。徒歩の所要時間を記した標識は一定数設置しており、維持管理に務めております」としており、当面は徒歩時間とメートル表記の2種類の看板が市内に併存することになりそうだ。