河野さんにお話を聞いた。
ーー学生の方たちと映画「下町の太陽」をご覧になった経緯をお聞かせください。
河野:私のゼミでは「江戸・東京」について考えるというテーマで学んでいます。その一環として、文献調査のかたわらで、東京を主題にした映画や、過去の東京を考える上で面白い映画を観てもらい、それについてディスカッションするという試みもしております。「下町の太陽」は、まだ下町と山手の経済格差が顕著だった時代の東京の雰囲気を知ってもらうという趣旨で取り上げました。
ーー学生の方たちには当時の労働文化についてどのように説明されたのでしょうか。
河野:正直にいうと、問題のシーンは私自身もあまり意識しておらず、それがディスカッションのテーマになるとは予想しておりませんでした。私は1979年生まれで、もちろん当時の労働文化に直接触れたことはありません。学生に指摘されて、「言われてみれば知らないか。知らないよなあ…。私もリアルでは知らないし」と唸らされたというところがあります。その場では、昭和の企業文化としてごくありふれた風景で、特にここを強調する意図は当時の作り手にもなかったのではないか、というようなことを話しましたが、ピンときていたかどうかは分かりません。
ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。
河野:色々な方が、ご自分の職場での体験談を呟いてくれたのが印象的でした。かつて当たり前だったけれど、今は当たり前ではない光景というのが都市にはたくさんあるはずで、特に余暇の過ごし方のようなものは当たり前すぎて文献でも残っていなかったりします。SNSを通して、皆さんの口頭による伝承がたくさん集まったのは予想外でしたが、非常にありがたかったですね。
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河野さんの投稿への反響を見る限りでは、今でも休み時間にみんなでスポーツをしているという会社も一部存在するようだ。強制やそれに近い圧力が無ければそれも趣味の一環としていいかもしれないが、読者のみなさんはこういった昭和以来の企業労働文化についていかがお考えだろうか。