昭和初期の風景が現代に甦る…祖父の遺した写真を公開する写真展 歴史的意義のある写真に世代問わず反響

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

京都・下鴨にある喫茶ギャラリー・さろん淳平にて、5月14日までの間、『祖父が見た昭和の風景 宮澤堂(たかし) ミニ写真展』が開催されています。

宮澤堂さんは、京都大学花山天文台職員や関西光学研究所(カンコー)の所長を務めながら、国産初の反射式望遠カメラ(ミヤニ式)を開発するなど、生涯を通じてレンズや天体望遠鏡の開発に携わった人です。プライベートでもカメラ好きで、昭和初期、戦前・戦後の写真を数多く撮影されました。

今回の写真展を主催する宮澤修平さん(@room_909)は、堂さんの孫にあたります。宮澤さんは昨年、数年前に亡くなった伯父さんから渡されていたSDカードから、約1万6000点ものお祖父さんの写真のデータを発見。その一部をTwitterで紹介し、話題に。

その時の様子は、以前にもまいどなニュースで取り上げさせていただきました。

今回の写真展では、そんな堂さんが撮影された膨大な数の写真の中から、一部を印刷写真やスライドにて紹介しています。

膨大なデータ、新たに見つかった写真も

「祖父の写真を発見したのが昨年5月で、(Twitterでの公開から)お待ちいただいている皆さんに何らかをお見せしたいというのがキッカケでした。ちょうど実家の店のギャラリーも空いている期間だったこともあります。昭和初期に建てられた京町家ということもあって、祖父の写真ともマッチしているのではないかと思います」

写真展の開催についてこのように話す宮澤さん。Twitterでの公開から約1年、新たな写真もたくさん見つかったといいます。

「取り込み済みのデータについても、スキャナのサイズが小さかったために全体の6割程度しか入り込んでいないことが判明しました」

当初見つかったデータは、不完全なものであったことが後で判明したそうです。なかには、トリミングされており、全体が確認できない写真もあったといいます。

また、堂さんが遺されていたアルバムが40冊以上、紙焼きの写真が数百枚見つかり、デジタル化されていない写真もかなりの数に上るとのこと。撮影された時期や詳細な情報は、SDカードのデータと堂さんのアルバムやそこに記載されている内容を確認しながら、一つ一つ検証してゆく必要があったとのこと。

宮澤さんは、果てしない作業に頭を抱えながらも、その中から風景写真や昔の人々の様子など、比較的分かりやすいものを選別し、公開しました。

印刷写真は、開催当初は20点ほどでしたが、現在(取材当時)では30点ほどになり、今後も随時増やしてゆく予定とのことです。

写真のほかにも、堂さんが遺したご自身に関する新聞記事の切り抜きや、ご自身が開発・使用されていた望遠鏡の実物なども展示されています。

主義主張なく、当時のありのままを伝えたい

堂さんの写真は、昭和ひと桁台に撮影されたものもあり、昭和初期の風景がありのまま残っています。

なかには、戦車や軍隊、満州国時代のハルビン、空襲後の街の光景など、戦時中の様子が生々しく写し出された写真も。

「主義主張なく、お祖父さんが現代に遺してくれたものを出したい。あったことはあったこととして伝えたい」

当初は、そのような写真を公開することについて、とまどいもあったという宮澤さん。しかし、周囲の後押しもあり、公開を決意したといいます。

そんな昭和のありのままを紹介する写真展。お店のお馴染みさんはもちろん、店頭でポスターを見た人、Twitterやホームページの告知を見て遠方から来た人など、実に多くの方が来場されているとのこと。

「ご年配の方は懐かしみながら当時のお話をしてくださって、そこでまた謎が解けたりすることもありました。若いお客さまは今の景色との違いに驚かれていますね。この時代でもこんな写真が撮れたんですね、なんてお声も聞かれます」

見る方の世代により、さまざまな感想が出ているとのこと。それだけ歴史的意義のある、貴重な写真の数々であることは間違いありません。

大きな目標もあるが、まずは地道な調査と整理を

数限りなく発見された堂さんの写真ですが、現在、展示されているのは、写真約30点、スライド約80点とごく一部です。

「いずれもう少し大きな展覧会をやってみたい」

そのようにも語る宮澤さん。しかし、そもそものデータがあまりに膨大であり、そのうえ調べれば調べるほど続々と新しい発見が。もはやどこから手をつけてよいか分からなくないような状況になることもあり、道のりは決して平坦なものではないようです。

しかし、宮澤さんはそれでも、取り組みを続けていきたいと話します。

「まずは地道に調査と整理を続けながら小さい発表を続けようかなと思います。活動を続けることで沢山の方の目に触れ、そこからまた新しい何かが始まるかもしれません。時間はかかるかもしれませんが、祖父と伯父が遺してくれた宝物を皆さんに楽しんでいただきたいと思っています」

取り組みの一つとして、宮澤さんは写真のグッズ化も検討。直近ではポストカードの販売を予定されています。

  ◇  ◇

「フィルム代で家が一軒買える」と奥さまに言われるほど写真に没頭していたというお祖父さん。その写真は、伯父が大切に保存し、孫である宮澤さん本人に受け継がれ、公開に至りました。

宮澤さんはその軌跡について、「何か運命のようなものを感じる」とコメントしています。

そんな『祖父が見た昭和の風景 宮澤堂 ミニ写真展』、開催は水~日曜日の11時~18時。期間は5月14日(日)まで。写真等の展示物の撮影や、SNSでの公開も可能です。今回の開催期間終了後も、随時写真の展示は行ってゆく予定とのこと。

また、本展示会の会場であり、宮澤さんのご実家でもある「さろん淳平」(京都市左京区)は、築約90年になる京町家を利用した喫茶ギャラリー。1階のお座敷をカフェスペース、1階・通り庭と2階・和室をレンタルスペースとして解放しています。

写真展は、他のイベントの兼ね合いで場所が変更になる場合を除き、2階のスペースにて開催中とのことです。

【会場情報】
(店名)
 さろん淳平
(所在地)
 京都市左京区下鴨西本町31-4
(アクセス)
 地下鉄烏丸線 北大路駅から東へ徒歩15分
 京都市バス「府立大学前」または「洛北高校前」から徒歩2分

■宮澤修平さんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/room_909

■さろん淳平のTwitterはこちら
 →https://twitter.com/salonjunpei

■さろん淳平のホームページはこちら
 →https://salonjunpei.com

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