近年、さまざまなデジタル化(DX)が進んでいますが、自治体での観光関連業務における現状はどのようなものなのでしょうか。各自治体で観光関連業務に関わっている全国の男女501人に調査をしたところ、約8割の自治体が「観光業のデジタル化(DX)に前向きに取り組んでいる」ことが分かりました。その一方で、「資金が足りない」「対応するスタッフが足りない」といった課題を抱えていることも分かったそうです。
株式会社Paak(京都府京都市)が、「自治体の観光DXに関する調査」と題して、2023年4月にインターネットで実施した調査です。
調査によると、82.6%の人が「自身の自治体では観光業のデジタル化(DX)に前向きである」(かなり前向きである:39.7%・やや前向きである:42.9%)と回答しました。
さらに、「取り組んでいるデジタル化(DX)」について複数回答可で答えてもらったところ、「Webサイト、SNSによる情報発信の徹底」(58.3%)、「観光地の見える化・データ化」(33.1%)、「インバウンド向け多言語対応」(26.0%)といった回答が上位に並びました。
一方、「取り組んでいない」(17.4%)と回答した人からは、「観光にあまり注力していないから」(30代男性/愛知県)、「予算的問題」(40代男性/秋田県)、「庁内理解が進まない」(40代男性/東京都)、「人がいない」(女性40代/長野県)など、予算不足や人材不足により観光業のデジタル化(DX)に取り組めていないという現状が浮き彫りになりました。
また、「インバウンドへの対応」についても複数回答可で答えてもらったところ、「SNSアカウント運用」(46.3%)、「Webサイトを多言語化」(32.7%)、「無料Wi-Fiの設置」(32.3%)といった回答が上位に挙げられました。
一方、「インバウンド対応を行っていない」(8.4%)と答えた人にその理由を聞いたところ、「難しい」(30代男性/兵庫県)、「判断すべき人が、対応しない」(40代男性/神奈川県)、「熱心ではない」(40代女性/北海道)、「外国人観光客向けのコンテンツが無い」(50代男性/愛知県)などの回答が寄せられました。
なお、「インバウンド対応を行っている自治体が抱える問題や課題」については、「いかに言葉以外の目印で伝えることができるか」(30代男性/千葉県)、「受け入れる観光施設でのインバウンド対応ができない」(30代男性/宮城県)、「来訪者の増減や、経済的効果に波がある」(40代男性/山形県)、「観光資源だけでなく、食の取り組みなど複数のカテゴリーの組み合わせが必要」(50代男性/千葉県)といった意見が寄せられ、人材や予算の確保が難しいことなどから課題の解決には時間がかかることがうかがえました。
次に、「観光業のデジタル化(DX)に前向きである」と答えた458人に対して、「取り組みの効果」を聞いたところ、76.4%の人が「効果があった」(かなり効果があった:23.8%・少し効果があった:52.6%)と回答。
具体的には、「業務が効率化できた」(20代男性/京都府)、「観光客が増えた」(40代男性/大阪府)、「観光客が激増し、地域の活性化にかなり繋がった」(40代男性/奈良県)、「情報発信の充実により、認知度が向上した」(50代男性/鹿児島県)といった回答が寄せられました。
一方で、「効果がなかった」(23.6%)と答えた人からは、「集客等に変動がなかった」(30代女性/熊本県)、「インバウンドの増加が期待できなかった」(30代男性/富山県)、「効果を計測する手立てが無い」(50代男性/愛知県)などの声が寄せられています。
また、「観光業のデジタル化(DX)の取り組みに対しての課題」について複数回答可で答えてもらったところ、「資金が足りない」(51.3%)、「対応するスタッフが足りない」(43.0%)、「技術的な知識が足りない」(42.1%)などが上位を占め、「資金不足」「人材不足」など、地方自治体ならではの課題が浮き彫りになりました。
回答者からは、「部分的に、徐々に取り組んでいけるといいのではと思います。専門のスタッフを雇った上で、外部委託をしていくのがいいと考える」(30代男性/神奈川県)、「専門知識をもった人材の育成」(40代男性/和歌山県)、「連携する事業者などと歩調をあわせながら対応する」(40代男性/山形県)、「予算と人員の増加」(50代男性/和歌山県)といった意見が寄せられたそうです。