保健所などに寄せられるトコジラミの被害や相談件数が増えているという。例えば東京都では2005年度に26件だった相談が、2019年度には458件に。ここ数日、ネット上でも被害報告の投稿が注目を集めるなど、にわかに関心が高まっている。刺された際のかゆみが激しいことに加え、聞けば、繁殖力が強いので自力で駆除するのは相当難しいらしい。害虫に詳しいアース製薬に取材した。
戦後ほぼ撲滅、しかしインバウンド需要で急増
南京虫という別名もあるトコジラミ。日中は段ボールやベッド、壁の隙間などに潜んでおり、夜間になると這い出してくる。刺されると激しいかゆみに見舞われ、人によっては発熱するケースもあるという。日本には江戸時代にやってきて、第2次世界大戦後に協力な殺虫剤によってほとんど撲滅されたが、近年は都市部のホテルや旅館などで発生。インバウンド需要の高まりを背景に、海外からの旅行者の荷物に紛れて“入国”し、そのまま日本に居着いて繁殖したとみられている。
トコジラミ用の製品も出しているアース製薬は、公式サイト内でトコジラミの見つけ方や対策を紹介している。体長は4.5〜5mm程度で、間違われがちなダニとは違い、肉眼でも十分に確認できる大きさだ。無吸血でも2〜3カ月は生存が可能といい、生涯産卵数は200〜500個に上るとか。主な発生時期は6〜9月だが、暖房が完備された日本の室内では1年中生息でき、アース製薬は「うっかり家に持ち帰ってしまうことを避けたい害虫」と強く注意喚起している。
もちろんアース製薬だけではない。東京都の福祉保健局も「被害の拡大を防ぐため早急に駆除する必要があります」「家庭での対策だけで駆除することは困難です」と、冊子などで呼び掛けている。
吸血した大部分をフンとして出すので、潜伏場所には血が混ざった赤いフンの汚れ跡が残る。アース製薬はサイト内で「天井や壁、カーテンなどに2mm程度のシミのような汚れがないかチェックしてみてください」と解説している。
家での発生確認!どうしたらいい?
アース製薬の担当者に聞いた。
—実際に旅行先などから家に持ち帰ってしまった場合、どうするべきでしょうか。
「トコジラミは飛ぶことができず、おなかをこすりつけて歩き回ります。見つけたトコジラミを駆除する場合は、有効成分を含んだマイクロパウダー入りの駆除剤を床に撒いておくことで、マイクロパウダーがトコジラミの体に密着し、効果的に駆除することができます」
「さらに、トコジラミの被害を見つけたら、部屋の隅(天井部分)や押入れの奥、ベッドの下などの潜み場所になりそうな狭い隙間にスプレーすることで予防ができます。隠れているトコジラミを駆除したい方は、くん煙剤がオススメです。また、虫よけ剤をお肌にムラなく塗布することで、トコジラミに刺されることを防ぐこともできます」
—近年は薬剤に強い抵抗性のあるトコジラミが問題になっていると聞きます。
「薬剤に強い抵抗性があるトコジラミは、旧来のトコジラミと比較すると1000倍以上の薬剤抵抗性を持つと言われています。当社の製品であれば、従来の有効成分(ピレスロイド系)が効きにくい抵抗性ゴキブリやトコジラミまでしっかり駆除できるくん煙剤『ゼロノナイトGゴキブリ用』をオススメします」
【アース製薬サイト内のトコジラミ情報】
https://www.earth.jp/gaichu/discovery/tokojirami.html
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とはいえ、市販の薬剤にある程度の効果が期待できるとしても、根絶するのはやはり相当難しいようだ。
前出の東京都福祉保健局も「家庭での対策だけで駆除することは困難」だとして、「早急に専門業者に見てもらい駆除を行いましょう」と呼び掛けている。