「新書は2時間で読むもの」と恩師の教え…みんな読めるの? 「読み方は自由」「理解するだけでも一苦労」の声も

塩屋 薫 塩屋 薫

新書1冊を読むのに、どれぐらい時間がかかるのか? SNSのある投稿に2万以上の「いいね」がつき、さまざまな反応が寄せられました。投稿した予備校講師の寺師貴憲さん(@tera_shi_ta)は「新書は2時間で読むもの、という呪縛にかかってる」そうで―。

そのきっかけはとなったのは、「院生時代、先生から『その新書を読むのに、どれくらいかかってますか?』『3日くらいですかね』先生は苦笑して『新書は首都圏のビジネスマンが、通勤時間の行きに半分、帰りにもう半分を読めるように作られてるんですよ。だからだいたい200頁ちょっとなんです。3日もかけるなんて…』と」と言われてしまったこと。

「実際は僕にはそんな簡単に読めないので、4時間から6時間はかかるし、そもそも新書を最初から最後まで読み切る集中力がなく(飽きる)、読んでいる途中で別の本に手を出してしまい(浮気)、中途半端に読んだ本がタワーに。そして絶望」と、先生の言葉が今も考え方に影響を与えてしまっているようです。

「読み方なんて自由」の声も、出版社側の見解は?

そんな投稿には、「10年以上かかっても読み切れてない新書(200ページ)があるんですが…」「同意。あの小さい字を読んで文章として理解するだけでも一苦労です」「文字を追うだけなら2、3時間でも読めますが内容を読むとなると無理だと思います」「そんな呪いは是非吹き飛ばして欲しいです!」と同意の声が多数。

そして「読書って基本、仕事じゃないんで読み方なんて自由だと思いますよ」「新書の内容によっては数日かかりますので、内容で判断すべきと考えます」「何回も読んだり、一週間寝かせたり、読んだ情報のアウトプットを試みてまた読み返したり、途中から読み返したり上級者は本一冊でも使い倒すと思います」「制限ある読書は、時間に追われて内容が頭に無いようとなるので、理解しつつ進めることが大事ですね」など、時間にとらわれない読み方を推す声も。

「昔編集者やっていたものですが、新書版は出張ビジネスマンが新幹線「ひかり」の東京→大阪間で読めるぐらいの(中身の軽い)ものが売れる、という作られ方をした経緯はあります。決して、2~3時間で読めなければいけないわけではありません」などの声もあり、現在もそのような目安はあるのか気になるところ。

出版社へ取材を試みたところ、「岩波新書」編集部は多忙のため辞退、「中公新書」編集部は「私どもの新書は、新書を代表して何か申し上げるほど、現代の新書事情においてオーソドックスな存在ではないように感じております」との回答、「講談社現代新書」編集部からは期限までの回答はありませんでした。

そこで、読み手側として「漢文講師たるもの、つねに自己研鑽に役立つ本を2冊同時並行で読んでいる」という寺師さんに今回の投稿への思いを聞きました。

「読了時間を日にちで測る」のはナンセンス

――今回投稿されたきっかけや思いを教えてください。

実際に今でも「2時間で読まなきゃ、少なくとも1時間100頁ペースで読まなきゃ」と思ってしまうからです。実際は、内容が軽めでも1時間50頁ほど。少し難しいと30頁に届かないので、そのたびに劣等感を含んだ焦りを感じます。新書を読むと、毎度恩師の言葉を思い出すのですが、たまたまこのとき呟いてみました。

――「新書」にどのようなイメージを持っていますか?

新書は原則として一般向けの教養書で、当該分野の最新情報や注目すべき時事を手軽に学べるものという位置づけです。だから自分の仕事(漢文・世界史・論文)に関わらず、広く月10冊はいろいろな分野の新書を手に取っておきたいと思っています。出版社と著者によるのですが、信頼できる知識を身につけられると考えています。

――賛否両論のコメントが多数寄せられましたが…。

みなさん、僕と同じく「本は読みたいけど、思ってるようには読めない」という悩みを持っているようで、恩師のある意味むちゃぶり(2時間で読め)に、総ツッコミが入っている状態でした。僕としては同志がたくさん現れる感じで、嬉しかったです。あと、慰めてくれる方も多くて、人の優しさを感じました。

なお、恩師の言葉は、勉強に不熱心な僕たちゼミ生に対する訓戒で「ビジネスマンが通勤時間にせっせと教養を積んでいるのに、おまえら院生が新書もろくに読まないのは、どういう了見だ」という趣旨だと理解しています。痛いところをつかれて、言われた僕たちはみな反省していました。

――今後、新書を読む上で心がけたい事はありますか?

「積極的に時間を取る」です。この手の話題をつぶやくと、「新書なんて1週間あっても読めない」といった反応があるのですが、この「読了時間を日にちで測る」のは、実はそもそもナンセンスで、1週間経っても読書に1分も費やしていないなら、当然読めるわけはありません。逆に「2週間かけて読む」といった場合、帰宅してから寝る前に15分ずつ、しかも前に戻ったりしながら読んで2週間。実際の読書時間は3時間半ちょっとだったりします。

というわけで、新書を読むのに4時間かかるなら4時間確保すればいい。日曜に2時間、平日に30分×4。これで週に1冊読めます。これからは、帰宅後のルーティンに30分読書を入れたいと考えてます。というか、ずっとそうしようと努力してしています…。

◇ ◇

寺師さんのTwitterでは「好きなときに、好きなところを、短時間でつまみぐいできるのが中国古典。『論語』とか『孟子』の後半とか『顔氏家訓』『貞観政要』『近思録』『菜根譚』『呻吟語』…。どれも短い文をまとめたもの。文庫本も充実している」など、多分野のおすすめ本が紹介されることも。気になる1冊があったら、どれだけ時間がかかるかは気にせずに読書を楽しんでみては。

■寺師貴憲さんTwitter https://twitter.com/tera_shi_ta

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