「桜のライトアップについて納得がいきません。植物が悲鳴をあげています。ぜひ専門家の評価を取材してほしい」。京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に、ライトアップでの桜への悪影響を懸念する男性から投稿が寄せられた。実際、どのような影響があるのか、京都府立植物園に聞いてみた。
投稿者は京都府城陽市の津田一弥さん(71)。津田さんは写真が趣味で「ファインダーをのぞいていると退色していて、昔の花の色と違うように見える。秋の紅葉も鮮やかさが失われているように感じる。ライトアップが原因ではないか」と疑問を呈する。
京都では有名寺院をはじめ、円山公園(東山区)、二条城(中京区)などでも桜のライトアップが行われ人気を博している。ライトアップは桜へ影響を与えるのか。府立植物園(左京区)の肉戸裕行副園長に聞いた。
府立植物園には約180品種、約500本の桜が植えられている。園は2006年から毎年桜の開花に合わせてライトアップを実施しており、今年も3月下旬から4月9日まで開催した。
肉戸さんは「年中ライトアップをするとなると影響が出てくるでしょうが、2週間ほどのライトアップだと影響は及ばないと考えています」と話す。
一方で「葉に光が当たるとやはり影響がある可能性があります」と肉戸さん。多くの桜が花を咲かすのは葉が出る前だ。葉が出るころにはライトアップが終わっているので木へのダメージは少ないというわけだ。
では、葉のある時期に行う紅葉のライトアップはどうなのか。府立植物園は2019年から秋に紅葉のライトアップを実施している。「紅葉は葉が落ちる前の状態。生育期ではないので影響は少ないと思います」と肉戸さんは見解を示す。
投稿にあった退色しているというのは事実だろうか。肉戸さんは、そもそも桜の花びらの色は開花後、日がたつにつれ白くなっていくと説明する。
ほかの可能性として、最近の電球の変化を上げる。以前は水銀灯などがライトアップに用いられ、やや黄色がかったように桜の花が見えていた。近年、本格的に普及したLED電球の場合、桜の花の色は白みがかったように見えるという。
府立植物園では3年前にすべてLED電球に切り替えた。「本来に近い桜の花の色をめでられるようになった」と肉戸さんは話す。
一方、今年は「桜の花が白っぽいのではないか」という来園者からの問い合わせが数件あった。2月下旬から3月にかけて平年を上回る最高気温の日が多かった。桜と同じバラ科に属するバラの場合、気温が高いと花の色が薄くなる傾向にあるという。ただ「気温だけでなく降雨量、成長量などさまざまな要因が考えられる。今年の桜の花の色が白く見えるという詳しい原因は現段階ではよく分からない」と肉戸さんは解説した。