京都府宮津市由良の海岸沿いにあるクロマツの「変わった姿」が話題になっている。木の上部には枝や葉が折り重なるように密集した謎の球体が。鳥の巣か、はたまた寄生した植物か。住民の間でも意見が分かれる物体の正体を調べてみた。
枯れたクロマツに
夏場は多くの海水浴客でにぎわう丹後由良海水浴場。砂浜からすぐの場所にある枯れたクロマツの上部に、1メートル50センチほどの球体ができている。目をこらしてみると、枝の上に植物が密集しているようだ。散歩していた市内の女性は「松から栄養を吸い取る植物ではないか」と不思議そうに見上げる。
由良海水浴場で浜茶屋を経営する竺原正和さん(71)は「2、3年前に気付いた。周囲では鳥の巣かもとうわさになっている」と言う。すぐ近くに住む千坂則子さん(77)も「15年ほど前に、家の裏の松にトビが巣を作ったことがある。そのトビが巣を移したと思っていた」と話す。地元では、鳥の巣説が有力のようだ。
鳥の巣ではない。その正体は巨大な
そこで、日本野鳥の会(東京)に問い合わせてみた。返ってきたのは「鳥の巣ではなさそうです」との回答。球体のような巣を作る鳥は全国にいるが、あまりにも大きすぎることが理由という。
では、植物が原因なのだろうか。京都府立植物園の樹木担当者に尋ねると、「芽状てんぐ巣病」という病気で間違いない、とのことだった。
この病気は多芽病とも呼ばれ、フシダニが松に寄生することでホルモンが異常に分泌され、部分的に多数の芽が発生する。一般的にはテニスボールほどのサイズが多いが、これだけ大きいのは珍しく、エネルギーが取られたことでクロマツ本体が枯れてしまった可能性が高いらしい。
15メートルほどの高さにできた球体は、そう言われてみると、「てんぐ」のすみかのよう。ちなみに、多数の芽がでることから「子孫繁栄」として喜ばれることもあるそうだ。