「初めてロレックスを父親から渡されたのは中学生のとき」…驚きの“英才教育”を受けた元販売員が明かす「ロレックスマラソン」の裏側

STSデジタルメディア STSデジタルメディア

なかなか目当ての品を買うことができないため、在庫を求めて毎日のように正規店に足を運び続ける「ロレックスマラソン」。そんな言葉に代表されるように、高級腕時計「ROLEX」はとにかく手に入らない。

また現行品が高級なのはもちろん、ビンテージやアンティークの年代物は希少価値が高すぎて1本1000万円を超えることも。

なんとこの金額、サラリーマンの平均年収の2倍の数字である。

一体何がそんなにすごいのだろうか…。ロレックス正規店の元販売員として勤めていたA氏に聞いた。

【A氏】ロレックスが好きすぎて専門学校で時計の構造を学んだのち、ロレックスの販売員へ。退社した現在は、コレクション資産の管理サービスを展開する株式会社between the arts運営のアンティーク時計専門店「Art Bridge」にてディレクターを務めている。

販売員ですら手に入らないロレックス

――ロレックスマラソンは勤めていたときからありましたか?

A氏: 僕が勤めていたのは2018年~2020年ごろのだいたい2年間くらいで、まだ「ロレックスマラソン」とは呼ばれていませんでしたが、当時から似たような現象はありました。1日でだいたい200客くらい来店していましたね。
ロレックスもすでに限界供給量は作っているらしいんですが、職人1人を育てるのに5年かかることもあって、世界的な需要に対して追い付かないみたいです。

――高い技術とクオリティを誇るブランドのプライドが、ロレックスマラソンの背景かもしれないと。

A氏: 色々な側面があるとは思いますが、それも1つの原因だと思います。
希少性に注目がいきがちですが、多くの時計ブランドに先駆けて確立されていった堅牢なつくりや実用性もロレックスの魅力ですし、だからこそ他ブランドに比べて長く綺麗な状態を保つことができる最高峰のクオリティの腕時計になっています。
また芸能人の方にもファンが多いので輝かしい成功者の象徴として分かりやすいことも、ロレックスの人気の理由の1つだとも思います。

――芸能界だと、どんな方がロレックスファンなんでしょう?

A氏: お会いしたことはありませんが、木村拓哉さんや長瀬智也さんはロレックスの愛用者として知られています。長瀬さんは6263(※ビンテージデイトナの超人気個体)のビンテージをご自身で愛用していたり、後輩の松本潤さんにビンテージロレックスをプレゼントした話などは有名ですね。
僕が店頭で見かけたことがある方だと、チュートリアルの徳井義美さんですね。たしかエクスプローラーⅡをつけていらっしゃったと思います。
あとは最近、YouTubeなど観ていて気づいたんですが、千鳥のノブさんもつけていらっしゃいましたね。
つい手首に目がいってしまうのは、きっと職業病ですね(笑)。

――販売員の方はどういうモデルを好んで持っているんですか?

A氏: それが、僕が働いていた当時だと、自分の好きなモデルを店頭でつけることはほぼなかったです。世の中的になかなか手に入らないデイトナを、店員がこれみよがしにつけているわけにはいかないので(笑)。
今もあるかは分かりませんが、当時はモニター時計の制度がありました。入社からしばらくすると、型落ちや返品分のロレックスが本社から届くんです。「これをつけて店頭に立ってください」って。それで、しばらくその時計を使っていると今度は「この時計買う? 買わない?」って連絡がきます。買えばそれは自分のものになるし、買わなければその時計は次のモニターのところへ流れていく。

――本当にモニターじゃないですか(笑)。

A氏: そうですよ。僕に届いたモニター時計はデイトジャストで、年齢や服装を問わず使いやすいシンプルなものだったんですが、どんな時計が来るかはランダムなので当たりはずれはありますね。もしかしたら21歳でコンビのデイトナをつけることになっていたかもしれない(笑)。
まあとにかく、ロレックスは希少で、買えないのは販売員も一般の人も一緒でした。だからこそ、僕がロレックスにいた時代、ようやく目当てのモデルを買えたらしい50歳くらいのサラリーマンの方が店内で号泣しているのを見かけたことすらありました。

――比喩でもなんでもなく、泣くほどほしかったってことですね。1本の時計で大の大人が泣くって凄まじいなぁ。

   ◇   ◇

ロレックスの魅力とそれに魅了された人々の世界に驚きながらも感動する編集部員。しかしA氏はなぜか苦笑い。そのわけは……?

驚きの英才教育と1700万円のビンテージロレックス

A氏: 父がビンテージロレックスの個人ディーラーをやっていたので、ロレックス自体は小さいころからすごく身近だったんですよね。高校のときは、父が「おい、これつけていけ」ってロレックス渡してくれたり。

――ロレックスつけてる高校生……うわぁ、こわいなぁ(笑)。ちなみにそれが初めてのロレックスですか?

A氏: いえ、初めてのロレックスは中学生のときに父から渡されたものでした。でも最初はニセモノを渡されたんですよ。
当時、父のコレクションを見ていて僕自身もロレックスに惹かれていたので、貰った時計について色々調べたんです。そうしたら、「ん? これ違くないか?」ってなって。
父にニセモノだと伝えにいったら、「おう、分かったか」みたいな感じで本物を出してくれました。どうやら、いつ気づくか試されていたみたいです(笑)。

――英才教育だ…。そのお父様から事業を受け継いで、ロレックスでの販売員経験を経て、現在ディレクションを務めているアンティーク時計専門店「Art Bridge」が成り立っていると。

A氏: そうですね。実は今日、何本かビンテージロレックスを用意してきたんですよ。1番左のデイトナ 6263は、ギャランティー(保証書)なども当時の付属品がすべて揃った完品で1700万円です。

――1本1700万円!? でも、なんだか思っていたよりもギラギラしていないというか、どっしりとした雰囲気がありますね(ゴクリ)。

A氏: ビンテージロレックスならではの経年変化のおかげかなと思います。たとえば元は白かったインダイヤル(文字盤のなかの3つの〇)が少し黄色くなっているんですが、これはビンテージ特有の経年変化です。
ちなみに現行のロレックスは同じ年月が経ってもこうはなりません。時代やテクノロジーの発展とともに、良くも悪くも塗料などが進化していてこうした変化が生まれにくくなっています。
一方で、ビンテージは、それぞれが辿ってきた歴史によって同じ年の同じモデルでも1本1本の雰囲気が全然違っていきます。そこがビンテージロレックスの醍醐味の1つですね。

――普通ならマイナスになってしまいそうな変色や焼けが、価値や希少性に繋がるんですね。

A氏: 不思議な世界ですよね。本来なら貴金属としては金のほうが資産価値が高いはずなのに、ステンレスのモデルに金のモデルの何倍もの価値がつくんですから。
ロレックスはアクセサリーとしての魅力もありますが、資産価値が高く、値崩れする可能性なども限りなく低いので投資資産としての側面もあります。世界の超富裕層は全資産の5%を腕時計やウイスキーなどのコレクション資産で保有しているというデータもあるくらいです。
ロレックスで言えば、16520(デイトナ)は10年で約10倍くらい相場価格が上昇しています。長期的に見るとロレックスはこれまで値段が下がった例がないので、不況やインフレ対策としても安心感が高いアイテムですね。

拳銃と偽物とビンテージロレックス

――いやぁ、本当に凄まじい世界です。金額が桁違いすぎて怖い思いとかしてそうですね(笑)。

A氏: ありますよ(笑)。
父の話ですが、フランスで紹介された取引相手とのホテルで商談しに行ったら、拳銃を突きつけられて数本で1億相当のロレックス奪われたり。日本でも強盗などに遭ったお店の話を聞くことも少なくはないです。特に危ないのは個人取引の場合で、時計を持っていったら袋叩きにあって時計を奪われるなんてこともあったようです。幸いなことに僕が被害に遭ったことはありませんが、自分で店を出すときもセキュリティには特に気を使いました。

――笑いごとじゃないです……。

A氏: 怖い思いとは違いますが、ロレックスは偽物や粗悪なカスタム品も多く出回っているので、売るにしても買うにしても信頼できる相手を見つけるのが大切だと思います。
僕は中身がクオーツで明らかに針の動きがおかしい偽物を見たことがあります。僕からすれば明らかな違和感ですが、そういう偽物でも知らないと見抜くことは難しいです。
あと最近は偽物もすごく精巧になっていて、プロが真贋を見抜くときに重要な判断材料にする“重さ”まで全く一緒に作られているものもあるそうです。

――中学生で偽物を見抜いていたA氏でも重さまで一緒だと難しいものですか?

A氏: 僕自身が直接その偽物を見たわけではないのですが、外側だけで100%大丈夫だと判断するのは難しいと思います。その点、私がロレックスの修理や、中身の細部までチェックをできるので偽物が紛れ込む危険はなく、価値の高いロレックスを安心して見てもらえる体制を作っています。
ロレックスを好きで目で見て判断できる部分に詳しい方は業者もコレクターも含めたくさんいらっしゃいますが、分解できて中身まで見られる人というのはあまりいない印象です。

――まさに好きを極めていらっしゃるわけですね。

この業界に入る動機は人それぞれで色々あるんですが、僕はロレックスが好きすぎて時計の世界に入りました。
入社したロレックスでも、本当は販売より修理がやりたかったくらいです。なのでロレックスで働いていた当時、新型コロナウイルスの流行で店舗の営業が難しくなったときは、ロレックスを中心に取り扱っていた知り合いの修理店に住み込みで修行させてもらってました。
販売のときもそうですが、修理をしていても、とにかくロレックスを触っているときの幸福感が格別ですね。

   ◇   ◇

正直なところ、話を聞くまでは1本数百万円のロレックスなんてお金持ちの道楽で、その専門家なんてその最たるものだろうと思っていた。しかし自身の「好き」を楽しそうに語る姿には、1700万のロレックスの輝きにも匹敵する眩しさがあった。

今後、ロレックスを買う未来が訪れるかは分からないが、投資目的であれ、何かの記念であれ、膨大な知識と磨かれた技術に溢れるロレックス愛を持ち合わせるA氏のような人物に相談したいと思わせる魅力が感じられた。

   ◇   ◇

【Art Bridge】
住所:〒101-0047 東京都千代田区内神田3-8-9 根本ビル1階
アクセス:JR山手線「神田駅」西口徒歩1分
営業時間:13:00~19:00(毎週水曜定休日)
公式HP:https://art-bridge-10.com/
Instagram:@artnridge.ab

【株式会社between the arts】
コレクション資産管理サービス「COLLET」を展開している。4/26よりロレックスのプレゼントキャンペーンを開催中。
公式HP:https://bwta.jp/ 
キャンペーンURL:https://zuuonline.com/contents/rolex_collect

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース