クルーザー2億5千万円 ヨット1億9千万円  初夏のヨットハーバーでひとときの富豪気分

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 新西宮ヨットハーバーで春と秋に開催される関西ボートショー。内外たくさんのメーカーのボートやヨットが多数展示されて賑わいます。今年2022年の春は4月22日から24日までの日程でした。その様子をご紹介します。

新西宮ヨットハーバーにセレブの世界

 阪神電車西宮駅からひたすら南へ南へ、見晴らし最高の橋を渡って真っ直ぐ行くと、突き当たりにあるのが新西宮ヨットハーバーです。いままさに「世界最高齢での太平洋ヨット単独横断」にチャレンジしている堀江健一さんの母港で、入り口には2004-2005年のチャレンジに使用したマーメイド号が展示されています。

 午前10時のオープンとほぼ同時にイベント会場のビジターバースに入ってみました。入場は無料です。

 コロナ禍の前には、当日受付で試乗できるボートがたくさんあって、早い時間にはその予約に並ぶ人が大勢いたのですが、最近は試乗艇は少なく、それも事前予約制なのもあってなのか、来場者の朝の立ち上がりは緩やかな印象です。

 よく晴れた初夏の日差しの下、桟橋の両側にずらっと並んだ、大きさもそしてお値段も様々なモータークルーザーやヨットを見ていると、なんとなく心が軽く大きくなってくるような感じがします。またブースで配られる豪華なパンフレットは、英語(じゃないか、フランス語かな?)の説明はよくわからないけど、美しい写真を見ているだけで舞い上がってしまいます。

 舫ってある艇で、スリッパが用意されているものは中の見学ができます。そこはもう、めくるめくセレブの世界。「この船で過ごす週末」の想像(妄想?)にしばし浸ってしまいます。

 このクルーザー2億5千万円、あのヨットは1億9千万円。モデルハウスやマンションギャラリーを冷やかしに行く、っていうののさらに数段上のステージをクリアした気分ですね。

 ボートショーにあわせて陸ではベントレーやロールスロイスの展示があるのですが、いい加減タガが外れた金銭感覚で見ると「おっ、ロールスか、いいやん、これなかなかお手頃っ!」とか思ってしまいそうになります。

 危険なので(いや、絶対に買えないから全然危なくないのですが)一旦桟橋から陸に戻ります。

ボートは手に入りにくいほど売れている

 ちょっと正気に返ったところで、泉州のマリーナのブースを見つけました。アンケートに答えるとトートバッグがいただけるようです。なんかいつもの世界というか、安全なところに帰ってきたようなホッとした気分で、アンケートに記入しながらブースの方と雑談します。

 

「盛況ですね。ボートっていま、売れてるんですか?」
「売れてるみたいですね。あの国産メーカーの一番高い新艇、抽選販売ですからね」
「えっ、当たらないと買えないんですか?」
「そうなんです、買えないんです。品薄なんですよ。いや、造ってないわけではなくて、以前と同じペースでメーカーは造ってるんですよ。でも海外の艇はコロナの影響で船便が滞って日本へ持って来れないんですよ。それで国産も手に入りにくいんです」「供給が少なくなってるんですね。需要はどうなんですか?」
「これもコロナの影響で、いま船のレジャーが人気なんです。海の上は密とは正反対ですからね。海外に行けなくてお金が余ってる富裕層が船を買ったり、あと昔から船を持ってたけど乗ってなかった人もまた乗るようになって、新しいのが欲しくなって買い換えたり。いまそれでモノがなくなって二年待ちとか三年待ちの状態です。コロナ特需ですね」

 コロナ禍で、思いもかけない形で影響が出ているのですね。

意外と現実的に楽しめる「海のレジャー」も

 ここまで、普通の人の金銭感覚からかけ離れた、浮き世離れしたお話ばかり紹介してきましたが、実際に海のレジャーはお金がかかります。さらにお金だけではなくて、船を維持するためのメンテナンスに時間も手間もかかります。住まなくなった家がどんどん傷むように、乗ってやらないと船は傷むのですね。

 お金と時間と手間。ということで海のレジャーとかマリーナは普通の人には縁遠い世界と思われがちです。

 しかし、比較的現実的な価格の中古艇もあります。係留しておくための費用は掛かりますが、何人かの有志でシェアするという形も実際に良くあります。また、船を持つのはやっぱり無理という場合でも、会員制のレンタル艇というのもあります。小型船舶の免許も、取得はそれほど難関ではありません。

 普段あまり馴染みのない方も、こういうイベントなどの機会にマリーナを訪れてみるのはいかがでしょうか。色とりどりの船を見ているだけでもきっと楽しめると思います。

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