「パンを焼かないパン屋」とは? 謎掛けのような投稿に絶賛の声「いいアイデア」「こういう頭の使い方、とてもステキ」

福尾 こずえ 福尾 こずえ

 「夜のパン屋さんは、パンを焼かないパン屋です」と謎掛けのような投稿が話題に。意図がわかった人からは「いいアイデア」「素晴らしい取り組み」「こういう頭の使い方、とてもステキ」と称賛の声があがっています。

夜のパン屋さん(@yorupan2020)は“パンを焼かずに代理販売”を行うお店。 「街の職人が大切に焼いたパン。でも、営業時間内で売り切れず、ロスとなってしまう時には、夜のパン屋さんがお預かりして、代理販売をしています。パン屋にとっては小さな収入となり、夜のパン屋さんではスタッフの雇用が生まれます」と、フードロス対策、雇用創生とともに、客も夜遅くでもパンを買い求めることができるのです。

「夜のパン屋さん」のプロジェクトリーダーであり、料理研究家として各方面で活躍する枝元なほみさんに「夜のパン屋さん」の取り組みについて詳しく話をお聞きしました。 

捨てられていたかもしれない5万8016個のパン

――「夜のパン屋さん」はどのような経緯でスタートしたのでしょうか

「発案したのは、ホームレスの人たちの自立を支援するため、オリジナルの雑誌を制作し、それを販売することで仕事の提供をしている「ビッグイシュー日本」(本社・大阪市)の東京事務所です。私は、その活動から生まれた認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表を務めています。「夜のパン屋さん」は食をテーマにして、新しい仕事づくりをやってみたいという思いからスタートしました」 

――具体的な内容はどのように決まっていったのでしょうか

「プロジェクトが立ち上がった2020年は、奇しくも新型コロナウイルス感染が始まった年。職を失ったり収入が減少したりする人が急増していました。食べるものに困る人がいる一方で、フードロスが社会問題になっている。そこで、その日の売れ残ってしまいそうな商品をパン屋さんから買い取り、販売できればと思ったのです」 

――なるほど。実際に始められていかがでしょうか

「この新しい取り組みが現在の社会制度ではカバーしきれていない人々の一助になっているという、確かな手応えを感じています。また深刻なフードロスに向き合う気軽な窓口として、人びとにも認知されてきたように感じます。2022年は、5万8016個の食品ロスになってしまったかもしれないパンを、夜のパン屋さんの活動を通じて、誰かにお届けすることができました」 

――お客様の反応はいかがでしょうか

「いろいろなお店のパンが並ぶので、楽しんでお買い物していただいているかと思います。特定のパン屋のファンの方もいますし、よくお買い物にきてくださる常連の方もいらっしゃいます。販売スタッフと会話をされる風景も日常となってきました」 

――現在契約されているパン屋さんの数はどれくらいでしょうか

「22店舗です。その日によって状況が異なるため一概には言えませんが、1日に並ぶパン屋さんの数はだいたい5〜13店舗です」 

ーーパン屋さん側からの反応は?

「ご協力店のPain au Sourireさんからは、『大切に作ったパンが無駄なく、最後まで誰かの手元に届くことはありがたいと思っています。自店舗で売り切れなかったときも”捨てる”ことはないと思えるので、安心してパンを作ることができるように』。また、夜のパン屋さんを通じて当店のことを知って来店していただけるのもうれしいです』というお言葉をいただいております」

――都内以外にも販売場所が増えていく可能性はありますか?

「2022年11月より北海道にもオープンしました。今後は都内だけでなく、他の地域でも同じ取り組みをしていただけるといいな、と思っています」 

――夜しか購入できないのでしょうか?

「今は、月に1度、第2土曜日の11時半〜17時まで、不揃いの野菜販売や、私が監修する「エダモンカフェ」などが出店するイベント<夜パン B&Bカフェ>を開催しています。昼間の時間ですが、パンを買うのを楽しみにきてくださるお客さんも定着してきました。これからは不定期なイベント出店なども増やしていけたらと思っています」 

――今後の展望を教えてください

「まずは『夜のパン屋さん』として、赤字を出さずに経済的にしっかり成り立つようにするのが目標です。また、ビッグイシューで取り組む「夜のパン屋さん」の、社会的起業としての考え方を発展させて、色々な形で“食”に関わる“仕事作り”に挑戦していきたいと思っています」 

◇ ◇

もともとはホームレスの人たちの自立のための支援として立ち上がりましたが、今はコロナ禍で急に仕事がなくなって困窮している人や、就労に困難を抱える人など、さまざまなバックグラウンドを抱えている人たちが、お互いのことを融通し合って働いているそうです。 「夜のパン屋さん自体は儲かる仕組みではないため、まだまだ改善すべき点は山積みですがもっと大きな輪となっていけるよう、精進してまいります」と枝元さん。三方良しのこの動きが大きな波となって、全国に広がることを願います。

夜のパン屋さんは、現在東京都内に3か所あります。
◉神楽坂駅から徒歩約9分、かもめブックス軒先【火木金19時〜】
◉田町駅から徒歩約1分、新田町ビル・スタバ脇【水木17時半〜】
◉飯田橋駅から徒歩約10分、飯田橋パークファミリア駐車場【火16時半〜】 

北海道では2022年11月から始まり、現時点(2023年(2023年4月10日)では月1回開催のため、開催日は「夜のパン屋さん☆札幌」Twitterにて告知。近くにお立ち寄りの際はぜひ訪れてみてください。 

■夜のパン屋さん Twitter  https://twitter.com/yorupan2020
■夜のパン屋さん公式HP  https://yorupan.jp/
■夜のパン屋さん☆札幌 Twitter https://twitter.com/yorupan_sapporo

 

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