酒気帯び運転の疑いで逮捕された容疑者が「奈良漬けを食べた」と供述し、飲酒を否認した事例が過去に何度かあります。奈良漬けだけでなく、かす汁や洋菓子などアルコールを含む食べ物はさまざま。奈良漬けを食べ過ぎて、気づかないうちに飲酒運転していた…なんてことはありえるのでしょうか?
JAS(日本農林規格)法では、奈良漬けのアルコール度数は3.5%以上と定められています。道路交通法で定められている酒気帯び運転の基準は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム(呼気1リットルにつき0.15ミリグラム)以上。アルコール健康医学協会が示す計算式に当てはめると、「飲酒量(ml)×度数(%)/体重(kg)×833」で血中アルコール濃度が求められます。
例えば体重65キロの男性が奈良漬けを食べたとすると、単純計算で約460グラムで基準に達することになります。ただし食べてからの時間経過などは考慮しておらず、あくまで概算での数値です。
警察庁がアルコール含有食品を調査
2006年度に警察庁が「アルコール含有食品に関する調査」として、奈良漬けとかす汁、ウイスキーボンボンを被験者に食べてもらい、呼気アルコールと運転能力を確認する実験を行っていたことが分かりました。奈良漬約50グラムを7人の被験者に食べてもらい、20分経過した後に呼気を測定するとともに、運転シミュレーターを使った走行実験を実施しました。
その結果、呼気中濃度はいずれもゼロで、走行実験でも影響は見られなかったといいます。報告書でも「(奈良漬けなどを)通常想定される量を摂取した場合のアルコール量は、缶ビール1缶分をはるかに下回る量である」としています。
「15センチほどの奈良漬けを一本食べた」
2009年には甲府地裁でこんな裁判も。飲酒運転をして酒気帯び運転の罪に問われた男が「15センチほどの奈良漬けを一本食べた」と供述し、飲酒について否認した事件です。検察側は男の言い分を確かめるため警察と協力して実験を行い、警察官5人が同じぐらいの奈良漬け(約100グラム)を食べたといいます。
いずれも呼気からアルコールが検出されず、こういったことも有罪の決め手になり、男は罰金25万円を言い渡されました。本当に奈良漬けを食べて基準値を上回るのは、並大抵の所業ではないのかもしれません。
ただし、近畿地方に勤務するとある警察官はこう話します。「道路交通法第65条の第1項には『何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない』とある。数値の基準はあくまで罰則の規定にすぎず、たとえわずかな量でも酒気を帯びているのであれば車に乗らないということを心掛けてほしい」。とはいえ、出先などでつい口にしてしまった場合は「量を抑えたり、少し時間がたってからハンドルを握るなどしてほしい」としています。